後半では、「UNITED ARROWS LTD. WINE CLUB」の蟹澤徹さんが3種類の土着品種(ネッビオーロ、バルベラ、ドルチェット)が使われた、エノテカおすすめのピエモンテワインをテイスティング。
引き続き、エノテカ株式会社ピエモンテ担当バイヤーの石田敦子さんに解説いただきます。
今回ご協力いただいた方々
「UNITED ARROWS LTD. WINE CLUB」の蟹澤徹さん
【ネッビオーロ】
パオロ・スカヴィーノ(PAOLO SCAVINO)〈ランゲ・ネッビオーロ 2018〉
バローロに新時代をもたらした巨匠が手掛ける1本。ラ・モッラ村の2つの畑、ブリッコ・マネスコットとアヌンチァータのブドウを贅沢に用いて造られています。
石田「『ランゲ・ネッビオーロ』は、ランゲという広いエリアで収穫されたネッビオーロを使用していいカテゴリ。ただし、ピエモンテ州の生産者はそこまで広い土地を持っているわけではないので、バローロなどに使うネッビオーロなども入っています。若いもの、良いものが入っているという意味では、イタリアの『ブルゴーニュ・ルージュ』といったところでしょうか。」
蟹澤「レンガ色で透明感のある外観ですね。ピノ・ノワールのような先入観があるのですが、それとは違う果実味と心地良い酸味、しっかりとしたタンニンを感じます。見た目が繊細ながら、味わいはぐっと来る感じ。このギャップがとても興味深いですね。」
石田「古樽を使用しており、樽のニュアンスをつけ過ぎないところが特徴ですね。若く飲んでも大丈夫なように果実面が重視されており、厚化粧をしていない、“ピュア”なネッビオーロを感じることができます。」
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【バルベラ】
カヴァロット(CAVALLOTTO)〈バルベラ・ダルバ・スペリオーレ ブリッコ・ボスキス ヴィーニャ・デル・ククロ 2016〉
持続可能な栽培に力を入れる、伝統派バローロの代表格が造る、他とは一線を画すバルベラ・ダルバ。ブリッコ・ボスキスにある区画ヴィーニャ・デル・ククロの畑から収穫されたバルベラを使用した1本です。
石田「2haにも満たない畑で収穫されている、バルベラ。ピエモンテ州で一番飲まれているブドウ品種でありカジュアルなものが多いのですが。こちらはこだわって造られているバルベラのワインです。2016年はピエモンテ州の当たり年と言われていますが、酸がとてもキレイで果実味もしっかりと出ています。」
蟹澤「しっかりと果実味を感じるワインですね。樽の香りが強過ぎることなく繊細な印象ですし、とても上品な味わいです。スパイシーさ、タンニンもしっかりと感じる力強いワインです。」
石田「このバルベラは東側エリアの畑から収穫されているため本来は力強いのですが、カヴァロットは自然ファーストを重視するナチュラリスト。バルベラがバルベラらしく育つことを大切にしており、ブドウの個性を生かした造りをするのため、上品で洗練された飲み口となっています。自らコントロールするのではなく、自然ファーストの姿勢。とても魅力的な生産者ですね。」
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【ドルチェット】
エルヴィオ・コーニョ(ELVIO COGNO)〈ドルチェット・ダルバ マンドルロ 2019〉
近年評価がうなぎ昇りで、“バローロのライジングスター”と称される気鋭の生産者。ピエモンテの土着品種を使用した、ブドウのフレッシュさとクリーンな飲み口にこだわった1本です。
石田「今回お出しするワインの中で最も若い、2019年。ドルチェットという、ピエモンテ州でも定番品種から造られている赤ワインです。イタリア人の毎日の食事に合わせやすい味わいで、しっかりと飲んだ感も感じられるおすすめの1本です。」
蟹澤「全体的に穏やかで刺々しさのない、とても飲みやすいワインですね。悪い意味ではなく一般的な赤ワインのイメージで、どんなシーンにも使いやすい印象です。ファッション的に例えると、ドレスでもカジュアルでもいけるという感じ。日常使いしやすい1本だと思います。」
石田「色合いがしっかりとしているのですが、そこまでパンチがあるわけでもない親しみやすいワインだと思います。背伸びせずに楽しめる距離感といった感じでしょうか。」
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自宅でも気軽にペアリングが楽しめる!
石田さん曰く、「私が自宅でピエモンテのワインを楽しむ時には、『トリュフ塩』や『トリュフオイル』を使用しています。牛肉や豚肉、鶏肉など、どんなお肉にかけてもでもいいのですが、ピエモンテ州で食べられているお肉は肉質が赤身主体ですので、脂身の少ないイチボがおすすめですね。トリュフ塩なら、ちょっと奮発するとご家庭でも活用できるのでぜひお試しください。」とのこと。
また、ピエモンテ州は子牛のタルタルがよく食べられているそうですが、ランゲネッビオーロなどは醤油やオリーブオイルなどでマグロをマリネしたものとの相性も良いそうです。
「ランゲ・ネッビオーロなど、シャープで繊細なので和食との相性も良さそうですね。酸があるので、マグロのお寿司との相性も試してみたいです。」と蟹澤さん。
自宅で作ることができる料理にはもちろん、和食にも寄り添ってくれるところが、ピエモンテ州のワインの特徴でもありそうです。
イメージを覆すおもしろい産地!
前半、少しピエモンテ州のワインに壁を感じていた蟹澤さんですが、石田さんの話を聞いたりテイスティングした後、その印象が大きく変わったようです。
「ここまで幅感があると思っていませんでした。求めやすい価格で試すことができるワインがあることも興味深かったですし、ペアリングも幅も広いので使いやすそうです。」と蟹澤さん。
石田さんからも、「小規模生産者が多く、さまざまなスタイルのワインに出会うことができるのがピエモンテ州です。ワイン初心者の方にとってみれば全く新しい産地ですし、詳しい方であれば、いろいろなことを発見できる産地…。これからも、エノテカはピエモンテ州に力を入れ続けていきたいと思っています。」とコメントをいただきました。
一歩踏み込むだけで、視界がぐっと広がるワイン産地。
ピエモンテ州はそんな魅力のある場所です。
もちろん、同州の代名詞であるバローロやバルバレスコもまだまだ深堀りすべきものですし、白ワインにも多様性があるそう。
個人的にも、これをきっかけにどんどんピエモンテ州を深堀りしていきたいと思います
ご参考
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ナカゴミ コウイチ
ラジオ関係、ファッション関係のライティングをしながら、大好きなワインのお仕事も精力的に行っています。
ワインは日常的に楽しむ飲み物であるということを広く伝えて行くために活動を続けています。