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突撃リポート

日本唯一!宮崎にある「木樽専門」の工場を見学してきた!

日本唯一の木樽"専門"工場

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ワインを愛する人にとって、切っても切れない存在。

それが、木樽。

ワインに限らず、食べ物のおいしさとは「複雑味」に比例するものであり、その複雑性を高めるために木樽からの成分抽出は高級ワインを作る際にも欠かせません。

一般的な高級ワインでも、そのほとんどが木樽で熟成されていることが多いですね。

しかし、日本でもウイスキーや焼酎などで使われることがありますが、実際に触れたことがある方はあまり多くはないかもしれません。



しかし!
実は日本にも、木樽専門で作る会社があることをご存知でしょうか?

今日は、今となっては日本唯一ともいえる「木樽専門」の工場を見学してきましたので、ぜひご紹介したいと思います!

想像以上に大きい工場

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外観から大迫力!

その工場があるのは、宮崎県都農市。
有明産業株式会社様です。

都農ワイナリーがあることでも有名な町ですね。

宮崎空港から車で一時間半ほどで到着する距離感です。



到着してみて、まずその外観から驚きます。

もっと小規模な工場をイメージしていたのですが、大迫力!

渋い木樽が工場の外に並んでいます。

とても紳士的な小田原さん

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すると、とても紳士的な方が出迎えてくれました。
常務取締役でいらっしゃる小田原孝吉さん。

早速、ご丁寧に様々なことを教えて頂きました。



「昔は日本にもいくつか木樽専門の工場があったんですよ」と小田原さん。

「私どもは、実はもともとは木箱を作る会社でございまして、木樽を始めたのは一番の後発。まだ、35年しか経ってません」

いやいや!
35年というと、一般的な業界では立派な年数ですが、これが大したことがないということは、木樽文化がよほど長く受け継がれていることが感じられます。

もともとは、三社ほど木樽専門の会社があったようですが、専業で木樽を作っているのは、知る限り有明産業様のみになってしまったとのこと。

大手酒造メーカー様などは社内で作っていることもあるのですが、近年のコンプラ重視の潮流もあり、危険な仕事は外部委託が増えている様子。
大手様の請負も増加しているようです。

また、表向き、他にも木樽を取り扱う会社もありますが、多くは有明産業様から仕入れたりメンテナンスの委託をされているようです。

とてもお忙しいご様子

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お客様のほとんどが、焼酎メーカーやウイスキーメーカー様。
よって、蒸留酒がメインのお仕事とのこと。

特に、最近のジャパンウイスキーブームで発注がすごく増え、日々忙しく工場は稼働されているようです。


「私どもの強みは、木樽を一度きりではなく、メンテナンスができること」

「実際に日本中から、木樽を直してほしいと言ったオーダーが溜まっており、今結構溜まってます」

「私達も0から作るだけではなく、海外の樽を買い付けることもあります」

実際に、工場内には世界中から集められた木樽が、丁寧に、そして大迫力で陳列されています。

日本の美しき文化が木樽にも

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すると、意外な実情も…。

「海外の木樽は、やはり雑な作りのものが多いです」

「だから、輸入しても実際にお酒を入れると漏れてしまったり、お客さまにそのままは販売できないので、確認が必要です」

「海外の人は、何度も要望を言ってもダメなものを送ってくる」

「だから、日本でメンテナンスができないとダメなんです。
 その結果、私達を使ってくれる会社が多いのではないかと思っています」


海外の本場の木樽こそ素晴らしい!と思っていましたが、やはりここでも日本のきめ細やかさが大切なようです。

どんどん、貴重な情報を教えて下さいました。
根本的に、海外と日本では、木樽の使い方自体が違ってくるようです。

「海外の木樽は、ワンウェイが前提。
 一回使って古くなったら、そこで捨ててしまうんです」

「だから、木樽に使われている"木の厚さ"が薄い」

「私たちは、一回だけではなく、メンテナンスをして長く使ってもらえるような木樽づくりをしています」

「もし木樽から木の成分が減ってきたと感じたら、一回解体します。
 そして、内側の木を削って、さらにもう一度焼き直すのです」

「これだけで新樽のように木のニュアンスを復活させることができるのです」

なるほど!
ここでも物を大切にする日本の美しい文化が現れているのですね。

※倉庫には世界から集められた木樽が並んでおり、壮観です。

恐るべし木樽へのこだわり

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場所を工場の中へ、移動します。
作り途中の木樽を見ると、木材と木材の間には目で見える隙間がある木樽も散見されます。

そこで、素人らしく、素朴な疑問をぶつけてみました。

「木樽って、木と木の隙間から滲み出てこないのですか?」

すると、ここでも日本製と海外製の違いについても、教えてくれました。


「例えば、アメリカなどでは、つなぎ目を埋める素材として食品衛生上問題ないとされているワックスが用いられています」

「ヨーロッパでも、小麦粉をベースとした練り物が使われている」

「それでも十分衛生的だとは思うのですが、できるだけお酒に影響を与えない天然なものを使いたい」

「そのため、"ガマ"という水草を乾燥させたものを弊社では繋ぎの素材として使っています」

「恐らく世界でも、天然の草でつないでいるのは、私たちだけではないでしょうか」


恐るべしこだわり。
まだお話を伺って1時間ほどですが、早くも日本の木樽に誇りを感じるようになってきました。

こだわりの裏には大変な苦労も…

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しかし、こんな「ガマ」という植物。どこから調達してくるのでしょうか。
気になって聞いてみると、

「地元の契約農家に作って頂いていました」

とのこと。

「さすがに、ガマだけを作っている農家さんはいませんので、地元の農家の方に作り方を教えていました」

「ただ、その方が亡くなってしまわれて…。その後は、悩んだ結果、偶然社員の実家で農業をやっている人がいたので、その実家に頼んでいます」

といった、苦労話も…。

そこまでこだわる品質への執念。
品質を守るための努力の凄まじさを感じました。

木樽の焼き加減にも繊細なこだわりが…

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さらに工場内に目配せをします。
すると、木樽の内側の焼き具合にも違いがあることに気づきます。

すると、用途によって焼き加減も大きく異なってくるようです。

「細かくは様々あるのですが、大きくはハード、ミディアム、ソフトの3種類の焼き加減があります」

「ウイスキーのように、しっかりと色味をつけたい場合は、ハードで焼きます」

「ワインのように、繊細な場合はハードだと木樽のニュアンスが勝ちすぎてしまうので、ミディアム以下ですね」

「ただ、ハードといっても、焼きすぎるとタンニンなどの生きた成分が死んでしまうので、微妙な焼き加減のコントロールが大切なんです」


残念ながら、その日の焼き作業は終わっていましたが、動画を見せて頂くと、衝撃映像。

まさに「火の車」です。

大手企業が社内での作業を行いたくない気持ちも少しわかります。。


また、大手企業が作る木樽では、ガスバーナーで焼くケースが多いようですが、有明産業様ではすべて炭によるオーガニックな焼き方をしています。
さらに、オフレコと言われておりますが、焼き方にも本当に細かい種類があり…。

本当にプロフェッショナルなお仕事であると感じました。

炭のにおいがお酒につかないの?

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ここでまだ、ザ・素人な疑問をぶつけてみました。

「これだけガンガンに焦がすと、変な匂いがお酒につかないのでしょうか?」

すると、あっさり論破されました。

「逆です。炭は匂いを吸収する性質があるので、むしろワインの変な匂いや汚れをとってくれます」

「お酒の方に炭の匂いが移ることはありえません」

家庭用の消臭剤でも炭が良く使われていますが、お酒にも全く同じことがいえるのですね!

木樽のプロは、お酒のプロ

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ワインとは話が違ってしまいますが、お酒全般をこよなく愛する私。
そういえば、焼酎でウイスキーのように色がしっかりついたお酒を見たことがありませんね。

このような質問もぶつけてみました。

「焼酎でも、ハードに焦がした樽を遣うケースもあるのでしょうか?」

すると、勉強不足を露呈する結果に…。

「いいえ、焼酎は実は色味に規制があるのです。
 ウイスキーみたいに濃い色になってしまったら法律的にいけないんです」

「万一、焼酎が茶色くなってしまったら、クリアな焼酎と混ぜて色味を薄めなくてはなりません。
 だから、焼酎でハードを使うところはないですね」

知りませんでした。。焼酎にそんな規定が…。


ここまでお話すれば分かりますが、木樽のプロは、もう本当にお酒のプロフェッショナルです。

最後まで繊細な工程

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見学の舞台は最終段階へ。
いよいよ出荷前に品質に問題がないか液体を入れて漏れがないかを確認する工程です。

このように、実際に水を入れて漏れがないか慎重に確認します。

ある程度の漏れであれば調整をすることで防ぐことができるのですが、もし修正不可能となればまたバラして組み立てからやり直し…。

ようやくここまでこれたのに、本当に途方もない作業です。

ミズナラは容器には向かない素材

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実は、今回の見学には、一つの目的がありました。

それは、日本固有の木材「ミズナラ」を使った木樽について興味があったからです。

軽い気持ちでこのような質問をしていました。

「ミズナラの木樽に興味があるのですが…」


すると、若干の難しい表情をされて、このように答えられました。

「ミズナラは、とても難しい木材なんです」

少し気安く質問しすぎてしまったかもしれません。

「木樽で最もよく使われるオークは、まっすぐ生える植物です」

「そのため、木目もまっすぐで木樽を作っても漏れにくい性質があります。
 またチローズという成分が水漏れを防ぐ役割も担います」

「一方で、ミズナラは曲がって伸びる木です。
 つまり、木目も曲がってしまうため、どうしてもその木目を通って水分が漏れやすくなってしまいます」

「オークと比べると、とても細かい作業が必要になってきます」

「容器として、不適切な素材と言えるかもしれません」

とても貴重なミズナラの木樽

12692また、市場的な要因でも難しい部分があるようです。

「日本固有の木材であるミズナラは、風味が素晴らしいので、最近では海外でも人気となっています」

「今では日本国内の大手メーカーからのニーズも高く、取り合いになっていてかなり希少な木材です」

「そのため、お手ごろな価格で、とはいかなくなってしまいますね…」

むむむ。
気軽に手が出せる代物ではなかったかもしれません。


気づけば、早くも2時間以上も説明を受けてしまっていました。
楽しい時間は、本当に早いですね。

日本の技術を、海外へ!

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最後に、改めてこちらの工場で作られる木樽についてのまとめを、お話を頂きました。


「海外の木樽は、流れ作業で作られるから、とても荒い」

「何個か樽を買えば、いくつかは使えないものがどうしても混ざってくる」

「だから、メンテナンスができる、ということがとても大切」

「当社が重宝されている点も、この点が大きいと思います」

「今後は、日本の技術を世界に輸出をしていきたい」


海外文化であったウイスキーが、日本産のものが世界でトップクラスと認められたように、木樽の文化も日本というフィルターを通すことで、さらに素晴らしいものとして世界に認められる日も近いかもしれません。

日本のモノづくりの文化は、本当に素晴らしいですね!

まとめ

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以上が、見学をさせて頂いた部分のまとめです!

実は、本当にたくさんのことを教えて頂いたので、もっともっと細かいお話もございました。
すべてを伝えきることは、恐らくできないのではと思います。

しかし、それでも、あまりスポットを浴びてこなかった日本の木樽技術について、少しでも多くの人が注目をして頂けたらとても嬉しく思います!



それにしても、ミズナラを使った木樽の貴重さを知った今、なおさら体験してみたい気持ちが強くなってきました…。

日本固有のミズナラで、日本で作られた木樽で、日本の品種で作られた「日本ワイン」があったら…。
ぜひとも味わってみたいですね。


そんな夢が広がった見学となりました!

貴重なお時間を裂いていただいた有明産業株式会社の小田原様。
本当に、ありがとうございました!

宮崎県はご飯がおいしい!

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最後に余談ですが、宮崎県は食事がとてもおいしい!

宮崎地鶏も、もちろん堪能してきました^^


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上村謙輔

上村謙輔

(社)日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート。 「ワインをもっと多くの人に楽しんでほしい!」「ワインの魅力をもっと知ってもらいたい!」という強い思いのもと、日本のワイン市場を拡大させるための活動を行っています。

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