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もう一度立ち止まって考えよう「ミネラリティ問題」!『ワインの秘密』の著者 清水健一さんに聞く!



ワインをテイスティングした時、無意識に「ミネラリティ(ミネラル感)」という言葉を使用している方は少なくはないはずです。この「ミネラリティ」に関しては、「何を定義にミネラリティとするのか」、という問題が以前から世界中で議論されていますが、未だ答えがはっきりと出ていません。

ワイン専門誌、ワインサイト、有名ワインジャーナリストのブログなど、ワインに関わる人の多くが、「ミネラリティとは?」といったような特集を組むのですが、毎度、“人それぞれの感覚なので、よくわからない”…で、締めくくられます。結果、「ミネラリティ」の定義は曖昧ながらずるずると市民権を獲得し、一般のワインファンの方たちも何の疑いもなく、この言葉を使うようになってきています。

個人的に「ミネラリティ」に恨みがあるわけではありませんが、やはり多くのワインファンの方に、この定義の曖昧さや問題を伝えるべきではなかろうか、と思い、今回コラムにいたしました。ミネラリティについてを振り返るとともに、先日、「ワインの殺菌効果」のインタビューでお世話になった、清水健一さんに、「ミネラリティ」についての見解をお聞きしてみました。
ぜひ、お読みください。

ミネラリティとは?

8588まず、根本的な問題として、ミネラリティとは何か?ということをおさらいしましょう。ワインに関わっているとされるミネラル分には、「鉄・マンガン・リン・カリウム・カルシウム・マグネシウム・銅・亜鉛・モリブデン・ホウ素・ニッケル」などがあり、これらはブドウにとって必須のミネラル分となります。

これらは、ブドウからワインに移行するため、これらの成分を舌で感じて、「ミネラリティなワイン」と誰もが表現できるのであれば、話はややこしくはなりません。しかし、多くの科学者はブドウ中のミネラル分が直接的にワインの風味要素になる、ということは考えられない(ワイン中のミネラル分がワイン中の他成分と反応して味わいなどに変化が現れる可能性はあるが)としており、実際にその説は間違ってはなさそうです。

では、一体この言葉でワインを表現する方たちは、何を捉えているのでしょうか。

土壌から来る何か説

8589ミネラリティに関することが記載されている記事、書籍などを確認すると、ワイン関係者の多くは、「地質や土壌由来の味わい」または「テロワール(日照や立地など)」の個性を表現したワインに、ミネラリティを感じているようです。さらに、石灰質土壌、シスト、スレート、花崗岩、玄武岩などの土壌が重要であり、粘土質や砂質土壌で育ったブドウでは、ミネラリティは感じにくい、という見解です。

もちろん、石灰質土壌であれば絶対にミネラル感溢れるワインができるわけではなく、栽培方法や気温、雨量など、ブドウ栽培に影響するさまざまな側面が起因しており、そのバランスが整うことで、ミネラリティなワインが生まれるとされています。
そんな環境から生まれたワインには鉱物感、塩っぽさ、鉄っぽさ、埃っぽさなど、土地由来の味わいがあり、それらを感じ取れた場合、そのワインは「ミネラリティなワイン」と表現されるようです。

とはいえ、テロワールのどの部分を抜き出して「ミネラリティなワイン」としているかは、栽培家や専門家、テイスターによってまちまちであり、これがこの言葉の定義を曖昧にさせている、という要因になっています。

揮発性硫黄化合物による影響説

8591一方、ミネラル感のあるワインは、「揮発性硫黄化合物」による匂いを感じているだけ、という見解があります。例えば、ミネラル感のあるワインの代表選手には、「シャブリ」がありますが、香りの特徴として、「火打石のような」「マッチを擦ったような匂い」があります。

これらの香りの要因は、揮発性硫黄化合物であるメルカプタンやジスルフィドが関係していると思われており、あまりにも多いとゴム、キャベツ、焼けたゴムのニュアンスを感じます。さらに、硫化水素、硫化ジメチル、チオール化合物などなど、濃度が高い場合は腐った卵や煮た野菜などの香りとなってしまう成分も、絶妙な量だけ含まれているのであれば、ワインに「ミネラル」なテイストを与えると考えられています。

個人的な経験ではありますが、以前とある試飲会にて、シャブリのとあるグランクリュのワインをテイスティングしたところ、トマトのような味わい、香りを感じました。硫化ジメチルは、濃度が高いとトマトの缶詰のような香りを出すそうですが、まさにその味わいを感じてしまい、これをミネラルと表現しているのか、と思うと複雑な気分にもなったものです。

揮発性硫黄化合物については、あらためて特集したいと思います。

では、結局ミネラルとは何なのか?

ここまでは、「ミネラリティ」について個人的な見解と情報についてお伝えしました。ここからは、ミネラリティについて、『ワインの秘密』の著者である、清水健一さんにお話を聞いてみました。
(※以下、インタビュー形式)

Q.ミネラリティなワインとは何なのでしょうか?

「『ミネラリティなワイン』といわれても、僕は何をもってミネラリティなのか、未だによくわかりません。
ある人は、酸が高く、すっきりしているワインをミネラリティと呼んでいますし、人によって千差万別な表現なのです。」

Q.ミネラル分が多く含まれているワイン、ということではどうでしょうか?

「以前、ミネラル感があるといわれているワインを実際に分析したことがありますが、かえって、ミネラル分が低いものが大部分でした。また、“鉄分に富んだ”といわれているのに、鉄分含量が低い例も多々ありました。
少なくとも、ミネララル感とミネラル分の間には全く関係がありません。」

Q.石灰質土壌がミネラリティに寄与していると言われていますが、

8593(Q.続き)これにはどのような理由があると思われますか?


「まず、“石灰質土壌の味わいを感じる”などという見解がありますが、ああいったものは全くの嘘ですね。石灰質土壌はカルシウムのイメージがあり、そこから多くの人が連想しているだけでしょう。

そもそも、ブドウ自体がカルシウム自体を多く取り込むわけがないし、そんなたくさん取り込んだら、ブドウは生きていけません。仮に、カルシウムを多く取り込めたブドウがあったとしても、それを醗酵してワインを造る過程で、大部分のカルシウムは沈殿してしまいます。」

Q.となると、やはり硫黄含有化合物が関係しているのでしょうか?

「ある種、この類いのワインには硫黄含有化合物の香りが関係している可能性はありますし、それを指摘する人は多いと思います。この硫黄含有化合物の香りは、少量であれば良い結果を出す品種もあります。

例えば、甲州の“きいろ香”やソーヴィニヨン・ブランのアロマなどは良い例でしょうね。しかし、こういった特殊なものでは良いですが、硫黄含有化合物の香りがあると本来持っている良い香りがマスキングされてしまったり、異臭と感じられる例がほとんどだと思います。」

Q.「ミネラリティ」を、別の言葉で言い換えるのであれば、

8592(Q.続き)どのように表現にすべきだと思われますか?

「これは、僕にはわかりません。もともと、曖昧な表現自体ですし、全てを括る言葉なんて存在しません。そもそも、これだけ人によって違う見解なのに、まとめることに無理があります。

ちなみに、以前、とあるワイン雑誌に『ミネラリティ』について、似たようなことを執筆しました。まぁ、大分辛辣なことを書きましたが…。」

Q.清水さんはミネラリティと表現される味わいのワインはお好きでしょうか?

「僕個人としては、そういったワインはあまり好きではありません。繰り返しになりますが、そもそも幅広過ぎてわかりません。ミネラル感がある、と言われているワインを飲んでも、自分でもわかりませんね。」

まとめ

清水さんにお話をお聞きましたが、改めて「ミネラリティ」はその概念だけが先走っており、根拠は置き去りにされてしまった言葉である、ということを確認できました。
長年議論され続けられながらも答えに辿り着かないこの「ミネラリティ問題」ですが、もう半ば、「許してやれよ。その人が使いたければ使わせてやれ」といった風潮となっているような気もします。

混乱を招くからできるだけ使わない、難しく表現せずとも共通認識できる言葉だから敢えて使う、その表現方法は個人の自由です。ただし、後者を選ぶ方は、「自分にとってのミネラリティの定義」を決めておいた方が、自らも混乱せずに済むはずです。

「ミネラリティ」。ややこしい問題ではありますが、今後も注目していきたいと思います。
     
      

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ナカゴミ コウイチ

ナカゴミ コウイチ

山梨県出身、甲州ワイン育ちのフリーライターです。ラジオ関係、ファッション関係のライティングをしながら、大好きなワインのお仕事も精力的に行っています。ワインは日常的に楽しむ飲み物であるということを広く伝えて行くために活動を続けています。

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