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ワイン事情

ワインの新潮流によってこんな影響が?新樽離れが加速中ってどういうこと?

    
カリフォルニアワインの新潮流として話題となった、「ピュアなワイン造り」。近年、ロバートパーカーが好むような超濃厚ワインではなく、ブドウ本来の味わいを大切にした、「繊細でエレガントなワイン造り」に、多くの生産者のスタイルがシフトしてきています。

今やこの流れは世界中に広まり、新世界の生産者はもちろん、フランスやイタリア、スペインでも、アルコール度数を抑えた禁欲的で奥行きのあるワイン作りを目指す生産者が増加しています。

さて、世界的にワイン作りの変革が起こっている裏側で、面白い傾向が現れ始めています。それが、ワインメーカーたちの「新樽離れ」です。今、ワインと新樽の間に何が起きているのか。事例も絡めながら、探っていきたいと思います。
    

樽から得られるものとは?

8102まず、新樽離れの問題にいく前に、樽とは、そして樽から得られるさまざまなものについてを知っておきましょう。

樽の製造に使用されているオークの種類は、「ヨーロッパナラ」、「セシルオーク」、「ホワイトオーク」の3種類であり、それぞれ購入者のワインのスタイルに合わせて使い分けられています。

ただし、ワイン向きといわれているのは、「ヨーロッパナラ」や「セシルオーク」に代表されるフランス産のオークで、抽出可能なポリフェノール含有量が多く、香りも控えめでしっかりとしたストラクチャーをワインに与えるとされています。

まず、樽をワインに貯蔵した場合、どのようなものを得ることができるのか、簡単にまとめてみましょう。
   

適度な酸化熟成

ワインメーカーは通常、醸造工程においてワインを酸素に触れさせないよう、徹底して酸素を悪者扱いします。しかし、樽熟成中は樽の性質を活かした微量な酸素供給による恩恵を受けるために、コロッと態度を変え、酸素を味方として扱います。

樽による微量な酸素供給によりタンニンの重合によって味わいが和らぐほか、アントシアニンとタンニンの化学反応による色調の安定化、さらにワインがストラクチャーを作り上げるからなど、ワインの品質が高まるためです。

さまざまな化学作用

8104オーク材の種類、どんな職人が手掛けたか、乾燥、トーストの度合いなどでも大きく含有量が変わってきますが、樽からはさまざまな成分が抽出され、それがワインと化学作用を起こします。

少しずつ説明すると、読むのが辛いと思うので、樽由来の芳香成分とその作用を簡単に表にまとめます。(拡大してご覧ください)

テイスティング時、この香りが取れるとしたら、“樽を効かしたワイン”の可能性が高いということですので、知っていると役に立つのではないでしょうか。

新樽が避けられている理由

8108では、ここから本題に入りましょう。前述した通り、樽からは多くの芳香成分などが抽出されたり、ワインの骨格に関わる作用が起こるなど、ワイン作りにとって樽は大変重要な役割を担っています。

もちろん、新樽の方がこの抽出成分が多く得られるため、大変リッチなワインを作ることが可能です。

しかし、一度新樽を利用してしまった場合、二回目にはその抽出レベルは50%に減少し、三回目にはさらに25%減少、四回目にはほぼニュートラルになってしまう、といわれています。

新樽が避けられている理由のひとつとしては、数回しか有用な成分を抽出できない割に、“高額すぎる”というシンプルな理由があります。

小規模生産者が増加している今、高額なオーク樽を大量に購入したり、毎年買い替えるのは大変なリスクです。アメリカには、オーク樽を大量に購入した後に良い部分だけを分解して、新しくリペアするという強者がいるようですが、これはレアケースです。

大体、趣味のワイン作りをする人のためのミニサイズのオーク樽であっても3,4万円はしますし、大きくなれば当然数十万円のものも存在します。

新樽を使って高額ワインを造ったところで、それが売れるかの保証はなく、作れば作るほどに経営が圧迫されていくのでは、長期的なワイン作りを行うことはできません。

抽出自体を避ける動き

8107新樽の風味をガンガンつけたい小規模生産者にとっては、オーク樽は高額過ぎるというリスクがあるので、オークッチップやオーク抽出液を使うものもいます。
とはいえ、新樽で熟成させたあの“感じ”には、どうしても及ばないようです。

さて、一方で冒頭でお伝えした、「ピュアなワイン」を目指す生産者のなかには、新樽を無闇に使用すること自体が危険である、という見方をする者もいます。

それは、逆に新樽から多くの成分が抽出されてしまうことで、ブドウ本来の味わいや個性が掻き消され、結果樽ワインになってしまうから、というものなのです。
   

全てフランス産ワインに?

新世界の生産者のなかには、せっかく自国で手塩にかけてブドウを醸したのに、フランス産のオークで熟成させてしまったら、結局フランスの味になってしまう…。という、意見の持ち主がいるようです。

確かに、フランスには新樽を利用して、素晴らしい味わいのワインを仕上げている生産者は多く存在しています。
他国の生産者者がその真似をして新樽をガンガン使ったところで、フランスの高級ワイン風の味わいとなり、本来の自分が目指していたワイン作りから遠ざかるばかりです。

とある海外のワインライターの記事の中には、“新樽を効かせ過ぎたワインは、松やにの香りが特徴的なギリシャの「レツィーナ」のようで、出来の悪いワインすらも香りで誤摩化そうとしている”、と個人的にレツィーナが嫌いなのかわかりませんが、それを比肩させて新樽信仰に警鐘をならすものもあります。

とにかく、エレガントでブドウの繊細さを楽しむ新潮流のワイン作りにとっては、あの新樽の強い香りはイマイチ受け入れられない、ということなのです。
    

古樽や大樽を利用

8106新樽から離れることで、繊細でピュアなワインを作ることができるかもしれませんが、やはり樽熟成で得られる恩恵を無視することは厳しいかもしれません。

近年、樽熟成で得られる微量な酸素供給を人為的に最速で行うことができる、“ミクロオキシジェナシオン”という技法も人気ですが、利用者以外からの賞讃の声はまだ聞こえてきません。
やはり、新樽を使わずに洗練されたワインを作るのは難しいのでしょうか。

その答えのヒントとなりそうなのが、2015年に南アフリカのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた、醸造家の「イーベン・セイディ」が取り入れている醸造法です。
彼は、大樽を使ったり、古樽を上手に活用してワインを仕上げていることで知られています。

小型のオーク樽は、液体が樽に触れることが多くなるため抽出量が多くなり、結果樽香の強いワインに仕上がりやすくなります。
しかし、大樽を使うことで新樽ほどの成分抽出が抑えられ、尚かつ酸化熟成の恩恵も受けることができます。

また、手入れが徹底されている古樽であれば、細菌汚染のリスクも低く、余計な樽由来の抽出物を抑えながら、適度な酸化熟成が可能です。

限りなくフレッシュなワインを作るために、古樽ないし、木材を使用することも避けたい、という考え方が注目を集めています。今、彼のワインスタイルに感銘を受ける生産者も多く、新世界でもこの動きが広まりつつあるようです。

甕仕込み

8109甕貯蔵というと、ワイン発祥の地といわれるグルジアを思い浮かべますが、別に伝統を守り世界中に伝えるために使っているのではなく、新樽依存から離れるために利用する生産者も増えてきているようです。

ブルゴーニュ地方モレ・サン・ドニを拠点する、「フレデリック・マニャン」は、2015年からなんと、甕熟成を一部のワインでスタートさせたようです。なぜ、名門生産者がこんなことをするのかというと、やはり理由は、「樽の木の香りを与えたくない」ということ。

甕熟成は面白いらしく、孔があるため酸化熟成も可能であり、樽に比べると酸化は早いが半年を過ぎると酸化の速度がピタッと止まるのだそうです。また、フレッシュで果実の印象が強くなることもあり、今後とても期待できるとのことです。

甕仕込みというと、焼酎や泡盛でも長きに渡り採用されていますが、遠赤外線効果及び無機物の触媒による熟成促進など、樽には無い面白い作用が期待されているようです。これもまた、新樽から離れたことにより、ワインが一歩面白いところへすすむキッカケとなりそうですね。
※画像はイメージです。
    

飲み手も試される時代に?

8105一部の生産者たちによる新樽離れが進んでいる、ということは、より個性的で繊細なワインが多く作られていく、ということにもなります。

ということは、誤摩化しの無い(新樽を使った素晴らしい個性的なワインは多くございますので、あしからず…)、ピュアなワインを我々飲み手は評価できるようにならなくてはいけない、ということです。

品種の個性や土地の個性、熟成方法の個性が、樽香に隠れることなく、より多くの要素が楽しめるワイン。もっと、多角的にワインを見なければならなくなりそうで、嬉しい悩みが増えてしまいました。ぜひ、みなさんも新潮流のワインを試してみてください。
   
    

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