2017年4月に創業70年以上のサントネージュワイン㈱の社名を冠した日本ワインのブランド「サントネージュ」を立ち上げた、アサヒビール。去る6月8日、同社が都内で「2017年 日本ワイン事業発表会」を開催しました。
そこで発表された内容は、なんと北海道余市町に4ヘクタールの農地を取得したということ。さらに、2023年に同農園で栽培されたブドウを使用した日本ワインの発売を目指していくという、なんとも夢のある計画でした。日本ワインに詳しい方であれば、今「北海道」という場所がどれだけ注目されているのかをご存知だと思います。
多くの小規模生産者も余市町に進出している今、ついにアサヒビールも道内に自社ブドウ農園を取得したということは、今後この場所が日本ワインをリードする拠点となることは間違いなさそうです。しかし、一体なぜアサヒビールが北海道余市町に農地を取得したのでしょうか。今回、日本ワインの今後のキーマンとなっていくであろう、アサヒビールの計画についてご紹介します。
注目されていく日本ワインと供給量の問題
日本ワインの定義は、「国産ブドウを100%使用した、国内製造ワイン」。アサヒビールから配布された資料によると、2014年に162万箱だった日本ワインの市場規模は、2015年時点には215万箱と伸長しており、今後もさらに数を伸ばしていくと期待されています。
しかし、苗木不足などの問題で日本ワインの供給量には現段階では限界があり、需要に供給が追いついていかないという現状があるようです。今すぐにという話では無いですが、アサヒビールのような大手が農地を北海道に取得したということで、日本ワインの供給量が全体的に増えるきっかけになる可能性があります。
中規模ワイナリーの方々にお話を聞くと、「プロとして、お客さまがワインを欲しいと思われた時に、必ず購入できるという量のワインを揃えておきたい」と口を揃えます。アサヒビールの今後の生産・販売量目標では、「2025までには現状の3倍の2万箱」という心強い数字も出ていますし、欧米諸国とまではいかずとも、欲しい時に高品質な日本ワインが必ず購入できる未来が来ることを、ワインファンとすれば期待したいところです。
なぜ北海道なのか?
冒頭でもお伝えした通り、今ブドウ産地として「北海道」が大注目されています。ブルゴーニュ・ヴォルネイに本拠を置く、あの「Domaine de Montille(ドメーヌ・ド・モンティーユ)」が函館で農地を取得するなど、日本はもとより、世界からも注目されているのですから、ワインファンとして知らないでは済まされない状況となってきています。
アサヒビールでは、山梨県では「甲州」「マスカット・ベーリーA」、山形県では「カベルネ・ソーヴィニヨン」「メルロ」「シャルドネ」「ソーヴィニヨン・ブラン」など、日本の土着品種から海外品種まで手広く手掛けているのですが、ブルゴーニュ系の黒ぶどう品種やドイツ系品種がありません。同社の日本ワインの商品のポートフォリオを強化するためには、ブルゴーニュ系品種などを加えることが重要であり、この北海道という場所に着目したようです。
今、ドイツでもピノ・ノワール(別名シュペート・ブルグンダー)が熱い視線を浴びていますが、それは温暖化の影響といわれています。北海道が注目されている理由として、梅雨が無いからという意見もありますが、ドイツ同様に温暖化の影響があるようです。もちろん温暖化を肯定するわけではありませんが、その一面として、これまでブドウを栽培するには冷涼過ぎる厳しい産地から、温暖化によってブルゴーニュ品種に適した土地となり、実際にピノ・ノワールから世界から賞讃されるワインをつくる生産者も出現しています。ブルゴーニュ系品種、ドイツ系品種から高品質な日本ワインを生み出すためには、北海道は今や無視できない産地となったのです。
期待を裏切らない余市町という選択!
さて、アサヒビールが北海道に着目する理由は何となく分かりました。しかし、北海道は恐ろしく広いわけですから、どの場所に農園を取得したのかが問題です。アサヒビールファンとしては、「まさか、余市を裏切るつもりじゃないだろな…」と思う方もいるかもしれませんが、そこはご安心を。
既に冒頭でもお伝えしましたが、今回アサヒビールが農地を取得したのは、北海道余市町であり、2017年2月に設立した農業生産法人のネーミングも「サントネージュ・ニッカ余市ヴィンヤード株式会社」となっています。実はウイスキーの製造会社ニッカウヰスキーはアサヒビールのグループ会社なのです。
ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝によってつくられた「ニッカウヰスキー 余市蒸溜所」がある余市町に、こんどは「ワイン」が主役の新しい物語がスタートするわけです。夢がありますね!
余市町の魅力って何?
強い絆で結ばれている、アサヒビールとニッカウヰスキーと余市町。とはいえ、余市町が選ばれた理由はそれだけではもちろんありません。
まず、余市町の特徴としては、「北のフルーツ王国余市ワイン特区」に制定されていることをはじめ、「北海道の中では比較的温暖でありブドウ栽培に適した気候」、「ワイン用ブドウについて品質が高い」、「ワイン醸造への新規参入者への支援が手厚い」など、とにかくブドウ栽培においての「理想郷」なのです。
ブドウ栽培面積は道内で30%ながら、生産量は道内で50%を占めており、長い経験から醸造用ブドウの栽培技術に優れた生産者も多くいるというのも魅力的です。秋には、町内のワイナリーの数は10軒となる予定だそうですし、アサヒビールの農地取得も含め、ますます余市町は「ワインの町」として発展していくのではないでしょうか。
今後の計画
アサヒビールによる今後のスケジュールですが、まずは今年の7~8月にかけて、垣根資材の組み上げが行われる予定だそうです。そして、注目の栽培品種ですが「ピノ・ノワール」をはじめ、「ピノ・グリ」、「ケルナー」といったヨーロッパ品種が約7,000本植樹される予定です。
ちなみに、植樹式は2018年5月頃を予定しており、その模様はまたお伝えしたいと思います。そして…2023年には待ちに待ったファーストヴィンテージが発売。収穫量は約20トン、製造箱数は約2,000箱を予定しているとのことで、いちワインファンとして、一体どんなワインができるのか今から楽しみでなりません。
一緒にワインをつくれる!?
今回のプロジェクトですが、非常に注目するべきポイントとして、ブドウづくりを一から体験できるサポーター制度「サントネージュ・ニッカ余市ヴィンヤードサポーター制度」なるものが登場します。ブドウの苗木の植樹から剪定、ブドウづくりの季節折々の仕事が体験できる制度で、ブドウづくりを本当に一から学べる貴重な体験ができます。
今、日本全国で休日だけボランティアでワイナリーにお手伝いに行かれる方も増えているようですが、植樹から…というのは恐らくほかに無いのではないでしょうか。サントネージュ・ニッカ余市ヴィンヤードサポーター制度」の募集は2017年の年末に予定されているそうなので、ご興味のある方は随時情報をチェックしておきましょう。
一緒になって日本ワインを盛り上げよう!
今回、アサヒビールが北海道余市町に農地を取得したという話題をお伝えしました。とても夢のある話で、ワインファンとしても期待せずにはいられないのですが、大切なのは飲み手である我々が、しっかりと日本ワインを支え続けるということなのではないでしょうか。
取材先などでワインメーカーに話を聞くと、「日本ワインがブームとはいっても、年間の日本人一人あたりのワイン消費量は3、4本程度。日本ワインの供給量が少な過ぎるために売れているように見えるだけで、実際この先のことは分からない。」と、答える方も少なくはありません。また、味よりもめずらしさが先行して売れてしまっている日本ワインも多く、本当に高品質な日本ワインの足を引っ張っているものも少なからずある…と、答えられる方もいます。
「日本ワインブーム」を一過性のもので終わらせてはなりません。
我々ワインファンも、メーカーや生産者さんたちと足並みを揃え、日本ワインの発展に向けて努力し続けていくべきです。アサヒビールの今プロジェクトにおいても、傍観者としてではなく、日本ワインを盛り上げたいアサヒビールのパートナーとして、積極的に関わっていきましょう。
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コラムの中にも登場したシュペートブルグンダー=ピノ・ノワール。ブルゴーニュやチリ、カリフォルニアともまた違う味わいです。冷涼な産地らしい、飽きのこない上品な味わいで、酸も柔らかくピノ・ノワールの入門編としても適した1本です。


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