【インタビュー】前編ーワインファン必読!ワインと魚介で感じる生臭みは『鉄分』だった!?メルシャンの田村隆幸さんにインタビュー!|カーヴ(Cave) -ワインがもっと楽しくなる!日本最大級のワインのレビューサイト

突撃リポート

【インタビュー】前編ーワインファン必読!ワインと魚介で感じる生臭みは『鉄分』だった!?メルシャンの田村隆幸さんにインタビュー!

   
「やっぱり、魚とワインは合わないよ。だって、生臭いんだもの…」。ワイン好きの方のなかには、魚介類を敢えてワインに合わせる必要は無いだろうと思われている方もいると思います。しかし、欧米には魚介類とワインの組み合わせが多く、さらに和食であってもワインとの相性が良い魚介料理が存在しています。一体、ワインと魚介類の組み合わせが良くない場合というのは、何が問題となって、我々にそう感じさせているのでしょうか。

実は、ワインと魚介の組み合わせで発生する生臭さの要因が『鉄分』であることを突き止められていた方がいました。それが、シャトー・メルシャン製造課長田村隆幸さんです。ワイン業界では、大きな話題となったこの研究結果。今回、田村隆幸さんに「ワインと魚介の組み合わせで発生する生臭さの要因は鉄分」という結果にたどり着いた経緯や、さまざまな研究の結果、ワインと魚介の合わせ方などを伺ってきました。今回、特別編ということで、「前編」「中編」「後編」の3部に分けてお伝えします。ワインファン、必読の内容です!

Q.『ワインと魚介の組み合わせで発生する生臭さ』を科学的に検証しようと

6173(Q.続き)思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

「私がメルシャンに研究員として入社したのが1999年なのですが、その頃は業界が盛り上がっていた97、98年の赤ワインブームが去った直後だったんです。当時のようにワインが売れるはずもなく、当社でも在庫の山を抱えていたんです。どうすれば、もう一度お客さまにワインを飲んでもらえるのかを、研究所内で日々考えていました。

赤ワインブームの2年間は、少なくとも消費者はワインを飲んでいたわけで、ブームが去った後とはいえ、飲まなくなった理由はほかにもあるのではないか、と思ったわけです。その中でワインが食べ物と合わなかったのではないかという仮説にたどり着き、その大胆な仮説のもと、当時私の上司であった副所長がワインと食事の相性の実験に取り組んだんです。」

Q.どのような実験を行ったのでしょうか?

6169「内容としては、毎晩の彼の夕ご飯が実験台でした。当時のメルシャンで扱っていた赤ワインを固定して、いろいろな料理との相性を試し続けてもらったんです。その頃から何となく魚介料理とワインの相性が難しいという体感があったんで、彼にはほぼ毎日のように魚介とワインの相性を試してもらい、それを『○△×』で評価してもらいました。

これは科学的な実験ではないのですが、後に生、茹でたもの、煮たもの、揚げ物、干したものなどに分類し、評価表としてまとめたんです。この表を見てみると、どうやら干したものにバツが付くことが多い。じゃぁ、これを、科学的に分析してみよう、ということがきっかけとなっています。」

Q.生臭みを感じさせる要因が鉄分と分かったのは何故なのでしょうか?

「さきほどお話した表で、最もバツが多くつけられていたのが、ホタテの干物だったんですね。先の検証ではワインを固定していたのですが、今度はホタテの干物、つまり食材を軸にして検証することにしました。実験の仕方としては、ホタテを口に入れた後、さまざまなワインを口に入れ、生臭みを感じ方を何人かの人に試してもらい、それを得点化していきました。

結果、感じない、非常に強く感じるといった、得点のバラツキが出てきました。それが、ワインの中のどんな成分と反応しているのかを調べるため、その時使用した69本あったワインの成分を全て分析してみました。成分濃度と生臭みの得点の関係を調べていったところ、鉄がもっとも生臭みと関係していることが分かったんです。これまでの一般常識だと、ポリフェノールがぶつかる要因ではないか、といわれていたんですけれども、ポリフェノールは鉄の半分しか影響していませんでした。言われていることと違った結果が出たことも、興味深かったんですね。」

Q.赤ワインの方が生臭みを引き起こしやすそうですが、どうなのでしょうか?

「ワイン自体、赤と白をまんべんなく試しましたが、赤だから、白だからという結果にはなっていませんね。鉄は双方に入っていますので、これも鉄が生臭みの要因であることが状況証拠として見つけてきたひとつです。」

Q.ワインにとっても悪影響を与えるほどの鉄分が入っていると、

(Q.続き)ダメなのでしょうか?

「伝統的なワイン醸造で鉄が気にされる部分としては、ワインが濁るとか酸化するということなどですが、ワイン中の鉄分が多いと、白ワイン中のタンパク質やポリフェノールと重合して沈殿し、濁りを発生させます。ワインメーカーとしては、鉄含有量を過剰にしてはいけないと注意はしているのですが、ワイン中に過剰な鉄分量が入っていない限り、濁りなどは発生させませんし、通常の範囲の鉄分であれば何ら問題はありません。

ただし、私たちの生臭みと鉄分の関係性では、ワイン中に存在しても悪影響を与えない分の鉄分であっても、生臭みを強く感じるという結果が出ています。これも興味深い結果のひとつですね。」

Q.とても興味深い結果ですが、これ以外にも生臭みに関する

6172(Q.続き)分析を行ったのでしょうか?

「そうですね。これだけの結果では、科学的に鉄分が生臭みを引き起こす要因というには不十分でしたので、反対向きの分析も行いました。今度は、鉄分を全く含んでいない、科学的に合成したモデルワインを造ったんです。酸っぱくて、アルコールの入っているワイン風の液ですね。それに、鉄のイオンを0.1、1、10と添加していったんです。

そのモデルワインを使って、また生臭みの感じ方を、弱いとか強い、とても強いなどと分析していきました。結果、鉄が無い飲み物であれば生臭みは感じないが、強い飲み物であれば生臭みを感じることが如実に分かり、これが、鉄が生臭みを引き起こす犯人であることの証拠のひとつとなりました。」

Q.鉄がそこまで生臭みに影響するのですね!驚きです…。

6168「次に、鉄分が入っている赤ワインを使った分析も行いました。EDTAというキレート剤があるんですが、これを赤ワインに入れていきました、キレート剤は、鉄分を取り除く効果のある薬品ですが、通常は赤ワインには入れてはいけないものですよ。

このEDTAを赤ワインに入れていくと鉄が打ち消されていきますが、生臭みの感じ方についても、EDTAを入れたことで鉄分が無くなるほどに弱くなっていきました。鉄分を含んでいないモデルワインに、鉄を入れれば生臭みを感じたし、鉄があるワインから鉄を除いたら生臭みが減っていくということで、科学的にも間違いなく鉄が生臭みの要因であることが、証明できたわけです。」

前編まとめ

ここまで、前編をお伝えしてきました。まさか、ワインのなかに含有されている鉄分が生臭みの原因だったとは、思いもよらなかったという方が多いでしょう。次回、中編では、生臭みを引き起こしてしまう原因は、魚介側には無いのか、ということについて聞いていきます。
      
    
◆関連記事
・中編はコチラから⇒   
・後編はコチラから⇒
     
◆ご参考
・シャトー・メルシャン
http://www.chateaumercian.com/

・KIRIN メルシャン製品情報
http://www.kirin.co.jp/products/wine/
     

    
    

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ナカゴミ コウイチ

ナカゴミ コウイチ

山梨県出身、甲州ワイン育ちのフリーライターです。
ラジオ関係、ファッション関係のライティングをしながら、大好きなワインのお仕事も精力的に行っています。
ワインは日常的に楽しむ飲み物であるということを広く伝えて行くために活動を続けています。

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