クリスマスやお正月など、イベント目白押しの年末年始を過ぎると、シドニーのあるニュー・サウス・ウェールズ州のワインメーカー達は途端に忙しくなります。そうです、秋のブドウの収穫時期に入るのです。
南半球のオーストラリアでは勿論、南アフリカ、アルゼンチン、そしてチリなどのワインメーカー達もこの時期の天候に合わせての収穫時期の調整に議論を重ね、手摘みでの収穫を行っているワイナリーでは人手の確保などに追われているようです。
その中でも、ハンター・バレーはオーストラリアの他のワイン・リージョンと比べ準熱帯性気候とも言えるほど特に暖かく、更に日差しが強く、そして適度な丘も多くあることから、ブドウが完熟するのが比較的早く、他のリージョンに先駆けて収穫時期を迎えます。
特に有名なハンター・セミヨンは酸度をうまく残すため、例年、1月中旬ころには収穫がスタートします。
ヴィンテージの意味
よく、「0000年のヴィンテージはとても良かった」などと言いますが、英語でVintageを使う時、実は2つの意味があります。1つは、日本語でもお馴染みの「年」です。とある特定の年のワインを語るときに使いますよね。
もうひとつの意味は「収穫」です。これは特に、ワイン業界で働いている人向けの専門用語的になるとは思うのですが、私もvintage が「収穫」という意味を含むとは知らなかったので、最初に聞いたときは頭の中に????が多く出現したのを覚えています。
そんなわけで、ワイナリーのある地域では’ How’s 2016 vintage going ?’ 「2016年の収穫(ブドウの出来)はどうだい?」的なフレーズが、ワイナリーを訪れる人たちによってよく使われることとなるのです。収穫時期を迎えたワイナリーにツアーなどで行く際に使ってみると、ワイナリーの方々は親切にイロイロ教えてくれると思います。
2016年のハンター・バレーのヴィンテージ
今年のシドニーもそうなのですが、なんとも夏らしくないのです。例年であれば、毎日30℃を超える気温の中、外を歩くのが嫌なのでのんびりと家で過ごすのが多くなり、良く冷えた白ワインを飲む量が増えていく・・・というパターンが多いのです。
しかし、今年はというと気温は25-30℃位を維持し、なんとも人間に過ごしやすい気温が続いていて、赤ワインが飲みたくなるような涼しい日もあるくらいです。雨も頻繁に降るので湿度もそれなりにあり、なんともシドニーらしくない(?)天候が続いています。
ハンター・バレーはシドニーから車で北上する事約2時間30分の場所にあります。土地の性質上の理由もありますが、ハンター・バレーはシドニーよりも約5℃位気温が高いのです。通常であれば収穫のこの時期には35℃を超えるような日が続き、乾燥した気候の中、収穫を今かと待ち構えているのですが、冷涼な年であることから、収穫を1週間遅らせていたり、湿度の高さからブドウが病気にかかってしまったりと、いつもとは違うvintage の様でした。
しかし、こういった例外的な年でも素晴らしいブドウを造るワイナリーというのはいるもので、しっかりとした、そして健全なブドウを育てているワイナリーのワインには大きな問題とはなり得ないでしょう。事実、同様に冷涼な年だった2011年は評価こそ低いものの、完熟し過ぎていない果実と酸度のバランスが程よく、(特にシラーズは、果実の凝縮感に長けたものが多いので)ハンター・バレーらしいワインではないものの、クオリティーに問題はなかった事を思い出させます。
今回ハンター・バレーを訪れた際には、Lake’s Folly やTyrrell’s といった大手の畑の手入れはやはり素晴らしく、ヴィンヤードはとても美しい眺めでした。
残念ながら病気にかかってしまったブドウの樹を保有するワイナリーでは、それらのブドウはランクを落としたワイン、つまりボックスワイン(バルクワイン)にすると言っていました。
収穫時期を迎えたワイナリーは忙しいものですが、オーストラリアではセラー・ドア-(Cellar Door)が普及しています。どんな時期でも専属のスタッフが試飲をさせてくれるので、ワインを楽しみながら今年のブドウの出来を話してみるのも、楽しいものですね。
それではまた次回に。
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