こんにちは。ブルゴーニュ在住のワイン好きライター、KIKIです。
2015年11月13日に起こったパリ同時多発テロはフランス社会に大きな衝撃を与えました。
幸い私の友人の中には被害に遭った人はいませんでしたが、大勢の人が犠牲になり、悲痛な思いでいっぱいです。
いつも通りの生活を送る事が大切
私の住むブルゴーニュはパリからは離れている上、田舎だからかもしれませんが、事件の後もいつも通りの生活を送っている人が多いです。
いつも通り仕事に行き、カフェに立ち寄り、レストランで食事をし、ワインを飲む。少なくとも表面上は特に変わったところは見られません。
テロがあった翌朝も犬の散歩に行き、パン屋でバゲッドを買って、いつもの週末とまったく同じ行動したという知人に「怖くないの?」尋ねたところ、「怖くないわけではないけれど、テロがあったからといって、家に閉じこもっているのは違うと思う」という答えが返ってきました。
日本人にはちょっと理解しにくいかもしれませんが、フランスでは「テロを理由にいつも通りの生活を変えるのは、テロに屈することだ」と考える人が非常に多いのです。
(Photo: https://flic.kr/p/BbVKcC, By Jean-François Gornet)
フランス人のテロへの対抗方法
それでなくてもテロ対策として、観光施設が閉鎖されたり、大規模なイベントが中止になったりしています。
長期にわたって観光客が減り、外出を控える人が増えれば、あらゆる分野で経済的ダメージを受けることでしょう。
ワイン業界や外食産業も例外ではありません。
「テロを怖がり立ち止まってしまったら、それこそテロリストの思う壷」というのは、そうした経済的影響も含んでいるのだと思います。
だからこそ今あえてコンサートに出かけたり、レストランに食事に行ったりすることで、フランス社会が受ける影響を少しでも抑えようとしているのかもしれません。
(Photo: https://flic.kr/p/B7T9ff, ByYann Caradec)
ワインという文化、いま飲む大事さ
テロが起こった翌日、あまりに衝撃的過ぎて前から開ける予定だったワインを「飲む気になれない」と私が言ったら、夫に「じゃあいつ飲むの?」と聞かれました。
「フランスで何千年も前からワインが造り続けられている理由は何だと思う?雨が降ろうが、槍が降ろうが、天災に見舞われようが、戦争が起ころうがワインを飲む人がいたからだよ。
ワインだけじゃなく、料理も音楽も、文化というものは受け継ぐ人がいるから存在できるわけで、受け継ぐ人がいなくなれば消えてしまう。
テロが起きたからワインを飲まないという選択をすることは、ワインという文化を根絶やしにする第一歩なんだ。」
「こんな時だからこそ」敢えてレストランへ
ということで、いつも通りの生活を送ることがテロに対抗する方法なのだという夫に説得された私は、「こんな時だからこそ」レストランに行ってきました。
平日の夜だというのに結構お客さんが入っていて、同じように考えている人がたくさんいることを実感しました。
今回行ったのは、シャロン・シュル・ソーヌの町にある「シェ・ジュル(CHEZ JULES)」というレストランです。
「飲んで応援」というわけではありませんが、前菜のサーモンには地元コート・シャロネーズの白ワインであるモンタニー(MONTAGNY)をグラスで。
メインの「コッコ・ヴァン(COQ AU VIN)」には同じくコート・シャロネーズのジヴリー(GIVRY)の赤をハーフボトルで頼みました。
「コッコ・ヴァン」というのは雄鳥を赤ワインで煮込んだ料理のことです。
デザートはサクサクのサブレにキャラメルムースが乗っているものでした。
レストランでの食事というのは味はもちろんのこと、盛り付けが美しいのでテンションが上がり、久しぶりに幸せな気分に浸ることができました。
日常をつなぐ、歴史を積み重ること
フランスでは何百年も前から存在する建物や文化が身近にあり、それらが生活の一部になっています。
そして、これから何百年先も同じようにそれらが存在し続けるのだと考えられています。
何百年も続いてきたものを自分たちの代で終わらせるわけにはいかない。
フランス人にはそういう気持ちが大きいのかもしれません。
何百年も前から続いてきたことが、これから何百年先も存在し続けるために自分たちが今するべきことは「つなぐ」こと。
これまでの平穏な毎日が変わってしまったことを感じていながらも、前を向いて歩き続けるフランス人。
歴史というのは「今、この瞬間」の積み重ねであるということを頭ではなく感覚として理解しているのがフランス人の強さなのかもしれません。
縁があってこの地に住んでいる外国人として、「いつも通りの生活を続ける」というフランス人の戦い方を見守っていきたいと思います。
末筆ではありますが、テロの犠牲となったすべての方々のご冥福を心からお祈り申し上げます。
最後まで読んでいただいて有難うございました。
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