「テロワール」と直結した日本ワインを楽しみたい方におすすめしたいのが、ヴァン・ナチュール。
オーガニックワインやビオディナミ以上に厳格な規定(生産者の自己判断によるが)のもと、ブドウ栽培&ワイン醸造が行われている、“ピュア”な味わいのワインカテゴリです。
さて、そんな「地」の味わいが楽しめるワインであれば、日本における「地」の食材と確実にマリアージュするはず。
ここでは、筆者が独自に選んだ日本三大ヴァン・ナチュールと日本が誇る「日本三大調味料」とぶつけてみました。
これこそ、日本ワインと日本の味のペアリング。
ぜひ、ご覧ください。
日本の地の味を知るならヴァン・ナチュール
冒頭でお伝えした通り、テロワールを意識してワインを選ぶのであればヴァン・ナチュールがおすすめです。
ヴァン・ナチュールを愛する人たちの中には、“テロワールを語るくせに、農薬を使ったり醸造にも人的な介入をしまくっているワインばかり。もはや、テロワールなど存在しないのになぜ生産地を丸暗記するソムリエ試験などが存在するか”という人もいます。(私はソムリエ試験は否定しておりません)
このテロワールはブドウの栽培環境だけと思われていますが、“人(生産者)”も重要なファクターとされており、ブドウを栽培する人、醸造する人のあり方もテロワールの一部である…という意見も少なくありません。
その地のポテンシャルを最大限活かして栽培された無農薬(有機や自然栽培)ブドウを原料に、人的介入無しでワインを醸す。(野生酵母で亜硫酸以外を使用しない、または一切使用しない)
つまり、「せっかくその土地の魅力を詰め込んだワインなのに、いろいろ手を加えてしまったら台無しだ」という哲学を持つ人などもテロワールの一部というこです。
もちろん、ヴァン・ナチュールはリスクの高い栽培法・醸造法であるため欠陥ワインも多いのですが、欠陥を一切感じない、「美しい」とすら表現したいものが多く存在しているのも事実です。
テロワールを語る…つまり、日本のテロワールを語るワインを選ぶのであればヴァン・ナチュールがよいのではないか…と、個人的には思っています。
※EUをはじめとした諸外国にはヴァン・ナチュールを規定する組織や生産者団体あるのですが、日本はまだ生産者が自ら醸すワインをヴァン・ナチュールと名乗るにとどまっています。なので、ここでは信頼できる日本の生産者のヴァン・ナチュールがおすすめという形で話を進めていきます。
日本三大調味料も日本の味!
さて、今回ヴァン・ナチュールと共に紹介したいのが、「日本三大調味料」。
日本三大調味料とは、
・しょうゆ
・みそ
・酢
…のことで、日本の食文化の根幹を支え続けているといって過言ではない至宝の調味料たちです。
さて、勘のよい方であれば気づいたかもしれませんが、これらは全て発酵調味料。
ワインと一緒で「発酵微生物」を利用して作られる食品です。
大豆や小麦、食塩、麹、穀物、米、酢酸菌…。
日本の知恵が生み出したこれら発酵調味料とワインは親和性があるはずなのです。
とはいえ…これら発酵調味料には大量生産されているものも多く、化学調味料や添加物、人的介入による速醸法などの使用など、「〇〇風」といったものも少なくありません。
今回、ヴァン・ナチュールと合わせるのにそういったものを選んだのでは本末転倒。
それぞれ、昔ながらの製造法で作られている「本物」を用意しました。
しょうゆや味噌であれば、原材料に大豆と麹が使用されており、酢であれば米などの原材料のみの表記。
余計な風味がしない、ピュアな味わいこそヴァン・ナチュールと最高のペアリングを見せてくれるはずです!
日本三大ヴァン・ナチュール×日本三大調味料を実食!
さて、伝え遅れましたが今回の企画で紹介する日本三大ヴァン・ナチュールはこちらの三本。
・ドメーヌヒデ(Domaine Hide)
・ラ・グランド・コリーヌ・ジャポン(La Grand Colline Japon)
・ボー・ペイサージュ(Beau Paysage)
CAVEでもお馴染みドメーヌヒデの生み出すワインは、生粋のヴァン・ナチュール(ヴィーガン)。
ラ・グランド・コリーヌ・ジャポンは、ギガル社のエルミタージュ地区栽培責任者などにも抜擢されたことで話題となった大岡弘武氏が岡山県に立ち上げたワイナリー。(世界的にも有名なヴァン・ナチュール生産者)
ボー・ペイサージュは、山梨県北杜市津金に位置する岡本英史氏によって設立されたワイナリーで、入手困難なヴァン・ナチュールを醸し続けていることで知られる有名ワイナリーです。
まだ日本ではさほど多くないヴァン・ナチュール生産者ですが、信頼できるワインを生み出す三人であることは間違いありません。(ゆえに三大)
さて、今回用意したワインは…
ドメーヌヒデ〈ヴィーガン 2019〉
ラ・グランド・コリーヌ・ジャポン〈小公子2019年〉
ボー・ペイサージュ〈ツガネ・ラ・モンターニュ・トランス 2018〉
これらの特徴を考慮しながら、日本三大調味料にぶつけてみました。
〈ヴィーガン 2019〉×無添加生みそ(赤)
華やかなリンゴの香りとピュアな風味、繊細な酸味と奥行きのある渋みが魅力の〈ヴィーガン 2019〉。
こちらに合わせたのは、マルマン株式会社の「無添加生みそ(赤)」。
樽から直接生詰めされたもので味噌自体に酵母菌が生きているという、まさにピュアな味噌です。
味噌だけ…というはアレなので、有機豆腐につけてペアリングしてみました。(しょうゆ、酢も同様)
一般的な赤ワインであればワインの渋みや酸味がぶつかるところですが、やはり日本のヴァン・ナチュール。
果実味が味噌の強い風味を包み込んだ後、後味が爽やかな印象になる完璧なペアリング。
“日本の命”を体全体で感じているような、懐かしく心穏やかになる組み合わせでした。
〈小公子2019年〉×蔵人 国産有機醤油
濃いガーネット色が特徴の〈小公子2019年〉。
とにかくジューシーな風味と引き締まった酸、タンニンが魅力のヴァン・ナチュール。
個性的な風味を持つ赤ワインだったので、今回は「蔵人 国産有機醤油」をペアリング。
国産有機大豆・小麦を杉蔵で仕込み熟成させた、昔ながらの天然醸造製法で造られた醤油です。
深く力強い味わいの濃い味わいの醤油ながら後味は爽やか。
〈小公子2019年〉のフルーティーな風味となめし革のような風味と醤油の個性がマッチングし、ぶつかるどころか後味は新しいうまさを感じられる余韻が鼻を抜けていきます。
おそらく、弱いパワーの醤油では〈小公子2019年〉に負けてしまうことでしょう。
日本の土地が生み出した旨さが感じられる、滋味溢れるマリアージュでした。
〈ツガネ・ラ・モンターニュ・トランス 2018〉×蔵人 静置発酵 有機純米酢
オレンジワインのような外観が特徴の〈ツガネ・ラ・モンターニュ・トランス 2018〉。
メルローを使用したうまみをたっぷり感じられる、ユニークなヴァン・ナチュールです。
控え目ながら引き締まった酸味とうまみが特徴ということで、今回は「蔵人 静置発酵 有機純米酢」をチョイス。
有機米を使用した米酢は、まさに日本人の味。
とはいえ、酢だけで合わせることは少ないので豆腐には軽く岩塩をプラスしました。
ワインビネガーやフルーツビネガーなら合わせやすいですが、一般的に米酢とはぶつかる印象のワイン。
しかし、さすがヴァン・ナチュール。
酢由来の酸味をまろやかにする上にうまみが乗り、さらに後味は口の中がさっぱりするという心地よいペアリングに。
米酢をダイレクに味わいましたが、すし飯にしたり手羽先を煮込んだりしたらさらに親和性がアップしそうです。
こちらも間違いなく、日本らしいマリアージュとなりました。
滋味溢れる食事を楽しもう
日本三大ヴァン・ナチュールと日本三大調味料は、予想通りマリアージュしてくれました。
もちろん、それぞれ種類が数多く存在していますし、その中でいろいろな組み合わせを試すことでさらにペアリングの幅が広がっていくことは間違いありません。
ひとついえるのは、「ヴァン・ナチュール」は日本で生まれた昔ながらの製法で造られている調味料との相性がイイということ。
日本ワインも、日本の農作物のひとつ。
日本の食材を使ったペアリングを、ぜひヴァン・ナチュールを使って極めていきましょう。
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ナカゴミ コウイチ
ラジオ関係、ファッション関係のライティングをしながら、大好きなワインのお仕事も精力的に行っています。
ワインは日常的に楽しむ飲み物であるということを広く伝えて行くために活動を続けています。