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「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材(肥料)で国産ブドウの収量アップ!?日本ワイン用の国産ブドウの品質向上のヒントがここにある!

       
アサヒグループのワイン製造会社であるサントネージュワインが手掛ける日本ワイン「サントネージュ」。
多くのワインラヴァーから愛されている、日本ワインにおける重要ブランドです。

さて、そんなサントネージュが興味深い取り組みを行っているというニュースを耳にしました。

それが、「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材(肥料)をぶどう栽培に活用した結果、収穫量アップや収穫物の品質が向上したというものです。

一体、「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材がブドウ畑にどのような影響を与えたのか。

今回、アサヒバイオサイクル株式会社の高崎智子さんサントネージュワイン ヴィンヤードマネージャーの宮川養一さんにお話をオンラインでお聞きしました。

ワインを語る上で土壌問題は欠かすことのできない話題です。

ぜひ、最後までお読みください。
      
       

「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材(肥料)について

まずは、同資材を開発したアサヒバイオサイクル株式会社の高崎さんにお話をお聞きしました。

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Q.「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材とはなんでしょうか?
        

20353「ビール醸造後のビール酵母を使用した農業資材(肥料)のことです。サントネージュの畑には、ビール酵母細胞壁の水に溶けない成分を特殊な加工で仕上げた『液状複合肥料』と、この原料をもとに珪藻土を混ぜた『土壌改良材』が使用されています。」



Q.どういった機能特性や効果があるのでしょうか?
         

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「まず、液状複合肥料についてお話します。ビール酵母細胞壁には、多糖類( β-1,3-1,6-グルカン)が含まれているのですが、それが植物に刺激を与えます。グルカンは植物病原菌の構造に似ており(ビール酵母なので病原菌ではない)、植物が病気に感染したと勘違いし防衛本能により強くなろうとするんです。人間で例えるとすれば、ワクチンを想像していただけるとわかりやすいかもしれません。植物は病害に負けないように強くなろうとするため、根張りを良くしたり病気の抵抗性が高まるといった効果が見られるようになります。」
      
      
Q.とても興味深い効果ですね。

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「また、液状複合肥料を作るために圧力鍋でぐつぐつ煮るように分解反応するのですが、この高温高圧反応により還元性が付与されるという特性もあります。人間でいえば酸化は老化、還元は若返り。酵母による還元性が土を若返らせ、良い微生物を活性化し悪い菌が抑制されるのです。枯草菌(納豆菌もその1種)や酵母、乳酸菌が増え土壌がふかふかになるといった、健全な状態にできる効果が期待できるということです。」


Q. 土壌改良材の機能特性や効果を教えてください。

     
「土壌改良材は珪藻土を使って粉状にしているのですが、この珪藻土に特徴があります。植物の光合成に重要な『二価鉄』を保持するほか、土壌中にある余分な肥料成分を一度補足して、植物が育っていく途中で放出していくような性質があるのです。実際にサントネージュワインの畑で良いブドウの収穫や樹勢の回復が見られています。」
       
        
Q.サントネージュワインの畑以外でも利用されていますか?

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「農業関係はもちろん、ゴルフ場や公園の緑化、甲子園の芝生などにも使用されています。」

食品由来であり安全性が高いこと、植物が強くなることで農薬散布などの回数を減らし環境面でもメリットがあること、温暖化による果樹栽培全般への貢献…。

農業を中心に幅広い場所で、「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材が活躍してくれそうです。
     
      

ブドウ畑で「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材を利用した理由

      
次は宮川養一さんに、「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材を各地のブドウ栽培に活用している理由をお聞きしました。

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Q.なぜブドウ栽培に同資材を利用したのでしょうか?

「高崎さんから、“ブドウ畑が抱えている問題はないか?”と声をかけられたことがきっかけです。じつは、以前から自社畑で試験的にビール酵母細胞壁由来の農業資材を利用してはいたのですが、その時はとくに問題を抱えておらず、あくまで試験としてしか考えていませんでした。」


Q.というと、問題を抱えている畑が出てきたということでしょうか?

「「サントネージュ」ブランドのトップキュヴェである『サントネージュ 山形かみのやま渡辺畑 カベルネ・ソーヴィニヨン』を生み出す、山形県かみのやま地区の渡辺畑です。近頃、40年以上この畑を管理していた園主から世代交代があったのですが独自の栽培ノウハウが伝承できておらず、ブドウの樹が弱り始めてしまったんです。その光景を目の当たりにし、“この畑をどうにかしないといけない”と思っていたことから、本格的にビール酵母細胞壁由来の農業資材を利用することにしたんです。」

現在、サントネージュワインでは前述した「山形県かみのやま地区の渡辺畑」と自社畑である「山梨県の牧丘倉科畑」、2017年以降に北海道・余市に取得した自社畑で同資材を利用しているそうです。


次に、それぞれの畑での使用した効果について宮川さんにお聞きしました。
       
          

渡辺畑での事例

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Q.「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材を利用して得られた効果は?

「もともと渡辺畑は、以前の園主が独自の配合肥料を使って管理していた“苦労する畑”なんです。ダム建設から客土してできた畑で土の力が全く無かった。そういった場所だったこともあり、樹勢が一気に弱ってしまいとても困っていました。しかし、同資材を使用したことで畑は以前の状態に戻りつつあります。」


Q.具体的にどのような効果がありましたか?

「樹勢が回復したことにより、2019年の収穫量が前年に比べ約1.5倍に増加しました。高崎さんいわく、“同資材を使用したことで植物自体にスイッチが入った状態になり、植物自体の根張りがよくなり樹勢の回復に繋がったのではないか?”ということです。」


Q.品質はどうでしょうか?

「まだワイン自体の品質の差は以前のものと比べてはっきりとわかりませんが、トップキュヴェである『サントネージュ 山形かみのやま渡辺畑 カベルネ・ソーヴィニヨン』の収穫量が増えたことは喜ばしいことです。ワインのボトル本数が減少することは私たちにとってダメージですので、樹勢が戻ってきたことが確実にプラスに働いていると思っています。」
       
         

山梨県の牧丘倉科畑での事例

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▲ 牧丘倉科畑の朝方の風景

     
Q.山梨県の牧丘倉科畑はいかがでしょうか?

「まず、牧丘倉科畑は渡辺畑のように問題を抱えているというわけではなく、今後おとずれるであろう温暖化などに対応するために同資材を使用しています。」


Q.どのような効果を得られましたか?

「ブドウ自体の免疫力が高まってきた感じがします。とくに腐敗果が6分の1に減ったことは大きなことですね。2019年はとくに厳しい天候でしたがブドウ自体の力が上がっていることで、ダメージをさほど受けませんでした。そのため、過去最高の収穫量となりました。病気は天候にも左右されますが、ブドウ自体の力も大切であり、根本的なところでもあると感じています。」


Q.着色についても向上したと聞いていますが?

「カベルネ・ソーヴィニヨンについては、着色が向上しています。今、山梨の盆地の低い方などは暑さにより着色が厳しいことが問題となっています。牧丘倉科畑は標高が780mの高地にあるので着色がまだいいのですが、それでも温暖化が進む今後のことを考えると着色の向上は大きな意味をもっていると思っています。」


Q.品質についてはどうでしょうか?

「牧丘倉科畑では、『サントネージュ 山梨牧丘倉科畑シャルドネ』と『サントネージュ 山梨牧丘倉科畑カベルネ・ソーヴィニヨン』を製造しています。詳しく検証できてはいませんが、香味的なもの、果皮の厚さ、味の濃さは向上していると思います。」


Q.ちなみにワイン用ブドウの場合、収量が少ない方が品質が高いイメージする方もいると思うのですが?

「おっしゃる通りなのですね。ただ、私個人の意見として日本の場合は土が肥えていることから、収量制限すれば良いと一概に言えないのではないか、と考えています。ヨーロッパなどのように石灰質土壌だったり海の底にあったような土壌の畑であれば収量制限により良いブドウが収穫できるでしょう。ただし日本は粘土質で土が肥えていることから、極端な収量制限によってバランスが崩れてしまい良いものができないのです。土地も土も健全であり、腐敗果が少ないこと。それによって収量が増えることは良いことだと思っています。」
       
       

北海道・余市の自社畑での事例

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▲ 畑の上空に虹がかかった余市ぶどう畑

      
Q.まだこれからだと思いますが、余市の自社畑はどうでしょうか?

「同資材によって、ブドウの樹の根張りがよくなることは先にお伝えしました。余市の自社畑はおととし、去年、今年と苗を植える状態ですが、これらの根の張り方は最も大切です。ワインの品質以前の問題で、根張りの良さを考えて同資材を使用しています。」


Q.余市だからこそ…の効果は何か期待していますか?

「ほかの畑は、すでにブドウ樹が成長している状態。余市の場合、ブドウの苗を植える前から同資材が使用できているため、さまざまな良い効果を期待しています。」


Q.これからビール酵母細胞壁由来の農業資材を他ブドウ畑で使用する予定ですか?

「自社畑が増えれば使っていきたい資材だと思っています。また、私たちは渡辺畑以外にも28軒の農家さんと契約しているのですが、同じような悩みを抱えている農家さんがいればそちらでも連携していきたいとは考えていますね。」
      
        

「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材の可能性

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「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材を使用したブドウ畑で、一定の効果が出たことがわかりました。

最後に同資材の今後の活用方法などについて、高崎さんと宮川さんにお話をお聞きしました。


Q.高崎さんにお聞きします。今後、ワイン業界に同資材はどのように貢献できると考えていますか?

「ワイン業界では樹齢が高くなればなるほどに良いブドウができるといわれていますが、樹勢を保ち続けるということは大変なことです。こういった部分でお手伝いができるかもしれない…というのがひとつですね。あと、近年新しいワイナリーが増えていますが、中には新規就農者の方もいらっしゃいます。もともと栽培技術が無い方のためのお手伝いなどもできる資材ではないか、と考えています。」


Q.宮川さんはどう考えていますか?

「高崎さんと、“隣の畑は青く見える…”なんて話をよくしています。ビール酵母細胞壁由来の農業資材を使用することで私たちの畑やブドウ、ワインがよい方向に向かっていることが発信され、それを見たほかのワイナリーさんが興味を持っていただけるようになるかもしれない。サントネージュワインが先駆けとなり、この資材が広がっていけば嬉しいですね。」
        
       

日本ワイン「サントネージュ」ブランドを楽しもう!

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ここでは、「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材について、そして同資材を使用したブドウ畑やブドウ自体にどのような効果があったのかお伝えしました。

ちなみに、『サントネージュ 山形かみのやま渡辺畑 カベルネ・ソーヴィニヨン』は2018年のヴィンテージ。

『サントネージュ 山梨牧丘倉科畑シャルドネ』と『サントネージュ 山梨牧丘倉科畑カベルネ・ソーヴィニヨン』も2018年以降のヴィンテージが、「ビール酵母細胞壁」由来の農業資材を使用した後に収穫されたブドウから造られたものとなります。

赤ワインは順次発売される予定ですが、『サントネージュ 山梨牧丘倉科畑シャルドネ』は2018年ヴィンテージがすでに発売中。

宮川さん曰く、「白ながらボディ感が違う。2017年に比べてぐっと品質が高くなっている」と絶賛しており、牧丘のカベルネ・ソーヴィニヨンに関しても「2018年は香りが複雑になってきている」とコメント。

ラベルデザインも一新した今年の「サントネージュ」。

ぜひ、ご自宅で楽しんでみてはいかがでしょうか!?
      
        

参照

       
サントネージュブランドサイト

アサヒバイオサイクル
     
      

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