【ワインのおしごと】ワインジャーナリストの山本昭彦さんに聞く!|カーヴ(Cave) -ワインがもっと楽しくなる!日本最大級のワインのレビューサイト

突撃リポート

【ワインのおしごと】ワインジャーナリストの山本昭彦さんに聞く!

           
ワインに関わる仕事をしている人たち。

ここから連想されるのは、ソムリエやワインショップのスタッフ、生産者といったところでしょう。こういった方々のおかげで、私たちは普段から美味しいワインを飲むことができているわけですが、実は1本のワインが私たちの手元に届くまでに、多くの人たちが関わっています。

そこでカーヴでは、ソムリエやワインショップスタッフ、生産者さんたちだけではなく、ワインに関わる仕事をしている、さまざまな人たちを紹介していこうと思っています。
         
         

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今回は、ワインジャーナリストで購読制ワインサイト「WINE REPORT(ワインレポート)」を主宰する山本昭彦さんにお話を聞いてきました。
          
           

Q.現在のご職業を教えてください。

          
「自称ワインジャーナリストです。」
        
         

Q.“自称”ですか?

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「ワインライター、ワインコラムニストなどいろいろな呼び名があると思いますが、私は元新聞記者ということもあり、“ジャーナリスト”にワインをつけてこう名乗っています。世間がどう思うかは別ですので、自称ですね。」
          
            

Q.どのようなお仕事内容なのでしょうか。

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「主に、購読制ワインサイト『WINE REPORT(ワインレポート)』を運営しています。
日々の活動で言えば、海外に行って産地を取材したり国内に生産者が来日した時に取材をしたり、企業などからレクチャーを頼まれたセミナーを行なうなどしています。また、ワインコンペティションの審査員をしたり、雑誌やウェブを含むメディアに寄稿なども行ないます。
ワインが主体ですが、音楽雑誌に頼まれて音楽関係の原稿やコラムを執筆することもありますね。」
            
              

Q.なぜ、ワインのお仕事を?

           
「私の前職は新聞記者で、読売新聞社に30年間勤務していました。
当時、同社が運営する“YOMIURI ONLINE ※現 読売新聞オンライン”で、ワインのコーナーを執筆していたのですが、新聞記者を長年続けていく中で将来も見えてくるわけで。最後の二年間は『BS日テレ』に出向して退職したのですが、私自身ワインが好きだったり、ワインの分野に特化して生きていこうと考えて退職後にワインの仕事を始めたという感じです。」
           
           

Q.退職後から今に至るまで、どのようなことをされていたのでしょうか?

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「2014年の春に退職した後、とりあえず雑誌へコラムを寄稿したりワインバーやレストランのコンサルタントなどをしていました。当時、『WINE REPORT』はブログで無料で公開していたのですが、2016年に有料購読制にしました。
つまり、この2年間は本を執筆したり雑誌用の記事を執筆したり、レクチャーをしたり…とにかく、いろいろとやっていましたね。」
            
             

Q.ワインジャーナリストとして活動する上で大切にしていることはありますか?

            
「活字からSNSまで、大勢の人々がワインについて書いています。その中で、“ジャーナリスト”と名乗るからには、歴史観をきちんと持つこと、そしてある程度の客観性を持つことを大切にしています。」
            
            

Q.歴史観と客観性ですか?

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「好きなワインや産地について、私よりはるかに深い知識を持っている人はたくさんいるでしょう。それだけにとどまらず、歴史観や世界の状況への理解、ワインを試飲する際に必要な基準を磨くのが、ワインジャーナリストのあるべき姿だと考えています。
歴史を学び、日々の情報をインプットしてそれをアウトプットし続けていく。ある意味、終わりのない世界ですが、そういったところが私の仕事に求められているところではないかと考えています。」
            
            

Q.やりがいというと、どんなところにありますか?

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「10年以上前の新聞記者時代の話になりますが、個別の新聞記事には読者からの客観的指標がありませんでした。
テレビ局にいた頃は視聴率という明確な数字がありましたが、一昔前の新聞の場合は投書やFAXの束を重ねて、“これだけ反応があったぞ”というのが世間に対する受け入れられ方の証明でした。
しかし、今はコメントなどもメールなどですぐにやってくる時代。顔が見えず正しいことが分からないという部分もありますが、ウェブメディアであれば反応が見えやすいという部分があります。」
          
            

Q.やはり良い反応はやりがいになるでしょうか?

         
「ネガティブなもの、ポジティブなものなどさまざまな反応はありますが、それが原動力になっているのは確かです。また、ほかにネットワークの広がりも原動力のひとつになっています。」
            
            

Q.ネットワークですか?

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「ワインの物書きに限らないと思いますが、仕事を続けていくうちにネットワークが広がります。
例えば、国内外でワイン・コンペティションの審査員として参加する時など、知り合いのワイナリーの人が、“このワインを飲みに行きましょう!”と声をかけてくれることもあります。
前職でもそういったネットワークはありましたが、人との繋がりが広がっていく点については今も単純に楽しいですね。」
           
           

Q.ワインというとネットワーク(人脈)がとても重要に感じていますが、それについてはどうお考えですか?

           
「それについては、ワインの世界は普通の産業以上に濃密な部分があると思っています。
例えば、ボルドーでワインの国際的なシンポジウムのようなものが開催されましたが、そこで有名な、『ル・パン』のオーナーのマダムのフィオナ・モリソンMWに会いました。私はル・パンに毎年必ずプリムールのテイスティングで訪れていますが、マダムにはそこで会ったことはありませんでした。しかし、“ジャックもあなたのことを良く話しているわ。”という感じで、そこでまた繋がりができたんです。」
           
            

Q.興味深い出会いですね。

            
「また、そこでアルゼンチンのワイナリー『ボデガ・カテナ』のローラ・カテナに出会いました。“あなた、去年うちに来てくれたわよね?”という会話となり、そこでまた繋がりが広がるんです。
例えば、知り合った人を経由して知り合いを紹介してもらったり、そういった輪が広がっていくことはとても大切だと考えています。
会社とはいえ、私は個人のようなところもあるので、このネットワークがどんどん拡大していくというのは醍醐味でもありますね。」
          
         

Q.ご自身の昔と今での、ワインに対する評価の違いがあれば教えてください。

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「まず、ワインへの評価についてですが、経験だけでなく、評価するためのテイスティングの手法はあった方が良いと感じています。
以前、私は山下達郎にインタビューした時に、“クリスマス・イブというのはいい曲ですね”という話をしたことがあります。とても聞きやすい曲だ、と伝えたのですが、“いやいや、あれはとても高度な手法を使って作った曲だ”と言ったんです。
まぁ、それも分かってはいたのですが、要するに彼は、“音楽を聞くにもそれ相応の耳が必要だ”と言いたかったのでしょう。」
             
            

Q.ワインについても、飲み手の鍛錬が重要ですね。

          
「ワインも同じです。私は、25年前に初めてロマネ・コンティを飲んだ時に感激しました。多くはありませんが、その後は蔵で樽から飲んだり、ボトルを開けて飲む機会に恵まれています。恐らく、当時の私は今の私に比べてそのワインが秘める要素の半分も読み取れていなかったでしょう。
しかし今だったら、何がほかと違い、どこが優れているのかは昔より分かるでしょうし、少しは表現できるかもしれません。こういった部分が長年ワインを飲んでいて変わってくる部分なのではないでしょうか。」
           
           

Q.プロとして長年の経験が必要ということでしょうか?

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「経験は大切だと思います。ただ、長年ワインを飲んでいるだけ……というだけでは厳しいように思います。常に自分を鍛える、という意識と自覚を持ってテイスティングすることが重要です。
栽培や醸造技術、気候変動などに対応する技術や造り手の成長など、常にワインは進化(深化)を続けています。ここ数年でもオレンジワインが出てきたり、昔にさかのぼればビオディナミなどのナチュラルワインなども20年以上前から日本にありました。
それを拒否するか、それともそこから何かを汲み取るか。そういったものに常に対応して、自分自身もアップデートしていかなければいけません。
“ブルゴーニュに惚れ込んでいるから、それだけしか飲みません”という方も個人の好みですから、それはそれで良いでしょう。しかし、ワインについて書き、それに対する対価をいただく以上、常に“ワインの進化(深化)”に自分が追いついていく必要があるのです。」
           
              

Q.山本さんがこの仕事を続けているモチベーションについてお聞かせください。

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「ワインは、私に何かしらの刺激を与えてくれる存在です。熟成によって当時飲んだワインから見えなかったものが見えてくるようになったり、知らない産地から知らないワインが出てきたり、評価の低かった産地から良い生産者があらわれたり、常にワインは私にインスピレーションを与えてくれます。」
           
            

Q.見えなかった、知らなかったことを知ることが面白い。

            
「5年前、亡くなったジェラール・バッセと一緒に1週間ほどのトレードツアーでカリフォルニアを回ったことがあります。その彼は、“昨日飲んだワインと今日飲むワインは違う。ワインについて知れば知るほど、知らないことが出てくる。ワインの勉強に終わりはないが、それがワインの面白いところだ”と言っていましたが、なるほどな、と思いました。」
          
           

Q.常にワインについて探求し続けるところに仕事の面白さを感じられているんですね。

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「例えば、永遠にビートルズを聞き続けている人がいたとしましょう。まぁ、それはそれでひとつのあり方だとは思いますが、そういった聞き方をしていればその人はビートルズで終わってしまいます。
ただ、もう少し追うことで彼らに触発された〈オアシス〉やそれ以降の人たちもたくさん発掘できますし、そういうやり方が音楽ライターや音楽好きの方たちの楽しみ方だと思います。
それはワインも一緒で、アンリ・ジャイエの昔のワインを礼賛し続けるだけではなく、彼に影響を受けた人を発掘するなども楽しみのひとつでしょう。あまり回顧主義的過ぎてもこういった仕事は続けられません。常に自分が良くなろうとする努力を続けないと楽しくないですよね。」
            
             

Q.山本さんは仕事以外にプライベートでワインを飲むことはありますか?

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「ワインを飲むと何らかのコメントは必ず書きますので、厳密に“仕事を抜きに…”ということはないですね。“飲むために、飲む”ということはあまりないと思います。そういう時はビールを飲みます。
ただ、ワインについてあまり考えないでいいデイリーワインなどを飲む時もありますよ。正直、気楽でいいですね。」
          
           

Q.山本さんと言えば、常に世界中を飛び回っているイメージですが体調管理はどうされているんですか?

          
「特に、“コレ”といった特別なことはしていませんが、“飲み過ぎない”ように注意はしていますね。」
         
             

Q.飲み過ぎないこと?

            
「例えば、先日、深夜便でパリまで飛んで朝4時すぎに到着、その後ボルドーに10時に到着して『シャトー・ディケム』のランチに参加しました。自慢めいて恐縮ですが、食前酒は、同じLVMH(ルイ・ヴィトン、モエ、ヘネシー)グループの『クリュグ』が出ました。ワインは『シャトー・ディケム』のものだけです。
日本人自体アルコールに強くありませんし、ここで飲み過ぎたらその後の仕事もできなくなります。内心小躍りしても、飲むことに抑制を持つ、ということが体調管理のコツです。」
          
            

Q.それにしても、お忙しいですね…

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「今、日本にいながら各国のさまざまなワインを楽しむことができますが、ワインは産地の風に吹かれないとわからないことが多くあるんです
例えば、先ほどお伝えした『シャトー・ディケム』ですが、現地ではやや“ぬるめ”の温度で提供されました。冷たくは飲まず、これが良い飲み方と伝えられました。料理との相性も実は広い。これも、現地に行かなければわからなかったことです。
実際に産地に行くことで、今まで見えなかったものが見えてくる。結果的に、旅を続けなければいけないわけです。」
          
          

Q.ありがとうございます。今後の展望についてお聞かせください。

            
「体調を保って、今のペースで仕事を続けていくことです。ただ、個人的には本を書くことが好きなので、本の執筆をじっくりとできたら嬉しいと思っています。
常に書きたいアイデアは頭の中にあるのですが、なかなか時間が取れない…。とはいえ、英米のワインジャーナリストたちは忙しい中でも書籍を出版しています。彼らや彼女らのように、しっかりとタイムマネージメントができることが今後の課題です。」
           
           

Q.最後に、山本さんにとってワインとは?

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「永遠の謎…というと抽象的ですが、追い続けてもいつまでも辿りつかない存在でしょうか。『I still haven't found what I'm looking for』(終わりなき旅)というU2の大ヒット曲がありますが、この中で歌われている、“探し続けても見つけられない”という歌詞のように、永遠に追い続けても正体がわからないものが私にとってはワインなのかもしれませんね。」
           
            

取材を終えて

           
今回は、ワインジャーナリストで購読制ワインサイト「WINE REPORT(ワインレポート)」を主宰する山本昭彦さんにお話を聞きました。

ワインの「今」を正確に切り取り、客観的でありながらも独自の目線で発信し続けている山本さん。

「WINE REPORT(ワインレポート)」をまだ見たことがない、という方はぜひアクセスしてみましょう。

今までアナタが知らなかったワインの“面白さや魅力”に触れることができるはずです!

WINE REPORT
       
         

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