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突撃リポート

【素朴な疑問】ワイン博士 清水健一さんに聞きました!ワインに使われている樽の種類とは?

           
ワインについて、わかっているようで、よくわかっていない。
ワイン初心者はもちろん、愛好家の中でもこういった悩みを持っている方が多いようです。

自分で文献を調べるほどのことでは無いが、人に聞くのもちょっと億劫だ。
こうなると、永遠にその疑問と対峙せず、分かったふりで過ごしていくことになりかねません。

そこで、カーヴでは今後、こういったワインの素朴な疑問を『ワインの科学』の著書でワイン博士こと清水健一さんに聞いていこうと思います。

今回は、「ワインに使用されている、“樽”」をテーマでお届けします。

ワイン初心者の方はもちろん、ワインをちょっと詳しく学んでみたい方もぜひご覧ください。
          
          

今回お話しを伺った方

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▲『ワインの科学』の著書でワイン博士こと清水健一さん

           
           

Q.樽の種類に教えてください。

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「昔からさまざまな材質が使われていたと思われますが、今ほとんどのワインや蒸留酒で、“オーク樽”が使われています。オークと一口に言ってもその種類はさまざまで、ヨーロッパ系やアメリカ系のほか、日本のミズナラなどもオークの一種になりますね。」



Q.ワインに使用されているのは?

「主にワインに使用されているは、“フレンチオーク(ヨーロッパオーク)”と“アメリカンオーク”ですね。アメリカンオークは樽の香りであるオークラクトンが多く、バニラ香が出やすいという性質があるなど、各々、個性が違います。ちなみに、ワインはフレンチオーク、蒸留酒はアメリカンオークが多く使用されています。」



Q.ワインにはフレンチオークが最適なのでしょうか?
           

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「フレンチオークにもいろいろな種類があります。例えば、高級なボルドーの赤ワインには、ほとんど“トロンセオーク”が使用されており、5大シャトーなどはトロンセオークで発酵させた後、別のトロンセオークで熟成させるという贅沢な使い方をしています。」



Q.となると、トロンセオークを使いさえすれば良いということでしょうか?

「そういうわけではありません。ワインに合わせた樽の使い方が重要です。フランスでも、アメリカンオークを使うところもありますし、タイプによってはトロンセオークよりアメリカンオークが良い場合もあるんです。」



Q.樽によってもいろいろと個性が違うということですね。
            

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「フレンチ、アメリカンという大きなくくりも関係ありますが、その樽の材質や焼き具合によっても個性が変わります。樽の内側を焼く工程を、“トースティング”と呼びますが、この度合いによっても樽の性質に違いがあらわれます。」



Q.焼き具合にまでこだわっているのですね。

「例えば今は、“ミディアムトースト”や“ミディアムロング”というものが多く使われています。日本にも多く輸入されていますよ。例えば、この焼き具合は樽の鏡面部分を見るとわかります。例えば、“M”と記載されていればミディアムトースト。“ML”と記載されていたらミディアムロング、“M+”と記載されていればミディアムより少し焼いた…という感じですね。」



Q.樽使いも技術も高品質ワインを造るためには重要ですね。

「そうでしょうね。樽の使い方がうまい人は樽の材質やトースティングをうまく組み合わせます。しかし、それには相当な経験が重要でしょうし、最低でも10年、20年と試行錯誤を繰り返す必要があるのではないでしょうか。」



Q.近頃、古樽というキーワードをよく耳にします。
       

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「基本的には古樽は昔から使われていますが、新樽を使うことはトレンドになっています。高級ワインには、やはり新樽が使われています。ただ、新樽だけでは樽の香りが出過ぎるので、新樽にしばらく入れて古樽という流れを採用しているところが多いでしょうね。」



Q.古樽のみを使う生産者も増えていますが、リスクがあるとすれば?

「樽の管理をしっかりとしていないと危険です。ブレタノマイセスと呼ばれる酵母が樽の中で増殖してしまい、“ブレット”という異臭を生成して、ワインの風味を悪くします。」



Q.ナチュール系のワインは新樽を避けたものが多いですが、“ブレット”は樽から?

「そういったワインには“ブレット“が多いですが、樽からの影響がもっとも多いと考えられます。それは、問題にもなっています。樽をきれいに掃除するなど、管理に徹底した注意を払っておかないと、ブレタノマイセスはあっという間に増えてしまうので注意してほしいですね。」

Q.そういえば、樽のサイズも関係しているのでしょうか。
           

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「樽が小さければ小さいほどに樽の影響が強くなり、大きければ大きいほど樽の影響は少なくなります。」



Q.大樽は日本ではあまりみかけませんね。
          

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「日本で大樽を使っているところは少ないでしょう。ただ、樽のサイズに関しても小さければ小さいほどい良い、大きければ大きいほど良い、というわけでもありません。ちなみに、イタリアのキャンティは大樽を使ったものがかなりありますが、それを使ったものは良い品質のワインが多いですね。」



Q.ちなみに、樽の善し悪しはパッと見で見分けられるものなのでしょうか?

「いや、難しいでしょうね。樽にもメーカーがありますが、基本的には微妙な差です。さらに、有名メーカーであれば樽漏れなどを心配するリスクもほとんどないですし、“良い樽”か“悪い樽か”を見た目で判断するような意味はないと思います。先ほどお伝えしたように、材質やトースティングによる違いを考慮すべきでしょう。」



Q.赤ワインと白ワインで樽の種類は変わるのでしょうか?
         

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「その前に、樽熟成による効果をおさらいしておきましょう。」

①適度な酸素を供給する効果

「ワインや蒸留酒にとって、オーク樽は熟成に最も適した酸素量を透過する容器です。例えば、トロンセは目が細かく酸素の透過量が少なくワイン向き、リムザンは目が粗いので酸素を多く透過するのでブランデー向きといった感じです。要するに、オーク樽は、“ワインや蒸留酒に一番最適な酸素を供給する容器”ということです。」

②樽の成分溶出効果

「樽からは、樽香であるオークラクトンやバニラ香などが溶出されます。また、ポリフェノールも樽から溶出されるため、それがワイン中の成分と反応して味わいに影響を与えます。この溶出量は新樽や古樽、また焼き具合でも変わってきます。」

③硫化水素などの吸着

「ワインにとって硫化水素はオフフレーバーとなります。樽は、この硫化水素を吸着する機能も持っています。酸素による低下も考えられますが、樽に入れるとある程度、硫化水素が消えるのです。」



Q.オーク樽はワインの育成にとって、非常に重要な役割を持っていますね。

「ワインを樽に入れる場合、この三つの効果を考えながら決めていきます。樽の種類にこだわるというよりは、そのワインを樽を使ってどうしたいかの方が重要なのではないでしょうか。基本的に、赤ワインに使う樽の種類も、白ワインに使う樽の種類も個人の好き好きといったところに落ち着きます。」



Q.そこまで白ワインならコレ!というのはないんですね。

「ただ、個人的にはフランスは別として白ワインには、“アメリカンオーク”を使う人が多いような気がしますね。案外、アメリカンオークの目は細かいんですよ。」



Q.また、樽熟成させる白ワインもまろやかなものが多いです。

「白ワインの酸と言えば、酒石酸やリンゴ酸。樽熟成されているものは、基本的にはマロラティック発酵が行なわれて、リンゴ酸が乳酸に変わっています。赤ワインのほとんどは樽熟成をしていますが、マロラティックされていますよね。この工程によりリンゴ酸が乳酸へ変化するわけですが、どうもリンゴ酸と樽の相性が良くないんです。そういった理由もあり、白ワインを樽熟成する場合は、マロラクティック発酵を行う場合が多いようです。」



Q.ちなみに、オークチップも多く使用されているのでしょうか?

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「オーストラリアやアメリカなどは樽香が好きな国ですので、多く使用されています。日本国内でも結構使われていますよ。」



Q.香りだけ、という効果ですよね?

「オークチップの場合、樽香はつきますが、前述したような樽熟成による効果は得られません。ただ、樽香をつけたいという目的であれば短期間で済みますし、費用も安く済ませられますね。」



Q.樽熟成は長く、辛抱強く行なうイメージですが、早くできる裏技はないのでしょうか?

「今のところ、樽以外でこの効果を得ることは無理だと考えます。我々も蒸留酒でいろいろと試してみましたが、遠赤外線を利用すれば熟成が早くなるなど、そういった方法は眉唾ものですね。ワインに関しても同様ですが、長ければ長いほど良いというわけでもありませんので注意が必要です。」



Q.長期熟成=素晴らしいワインのイメージです。
          

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「個人的には、“○○年以上熟成させなければ、レゼルバを名乗れない”など、いまだにやっているのはナンセンスだと思います。適度なところで瓶詰めした方が良いワインであることも多いですし、そういった規定で価格を釣り上げているだけなのではないでしょうか。」



Q.最後に、清水さんが山形県のカベルネ・ソーヴィニヨンを仕込むとしたらどんな樽使いをしますか?

「ボディのあるワインに仕上がったのであれば、トロンセの新樽で発酵させ、トロンセの古樽で熟成させますね。もし、ボディがあまりない場合は樽に負けてしまうので樽発酵もせず、古樽で熟成させるかもしれません。ワインによって、樽は使い方を工夫すべきでしょう。」
            
          
          

取材を終えて

         
今回、樽の種類について清水さんにお聞きしました。

ワインが好きになると、どの産地のどの生産者という所から入り、ブドウの品種や土壌、天候、ヴィンテージなどにこだわりだす方がほとんどだと思います。

しかし、これら条件がどれだけ素晴らしくても樽使いに失敗したら最後、ブドウ本来のポテンシャルが生かされていないワインが仕上がってしまうのも事実です。

少々マニアックではありますが、テロワールやブランドだけではなく、ワインに使用されている樽についても真剣に深堀りしてみるのも面白いのではないでしょうか。
          
             

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