【素朴な疑問】ワイン博士 清水健一さんに聞きました!熟成がワインにもたらすものとは?|カーヴ(Cave) -ワインがもっと楽しくなる!日本最大級のワインのレビューサイト

豆知識

【素朴な疑問】ワイン博士 清水健一さんに聞きました!熟成がワインにもたらすものとは?

             
ワインについて、わかっているようで、よくわかっていない。
ワイン初心者はもちろん、愛好家の中でもこういった悩みを持っている方が多いようです。

自分で文献を調べるほどのことでは無いが、人に聞くのもちょっと億劫だ。
こうなると、永遠にその疑問と対峙せず、分かったふりで過ごしていくことになりかねません。

そこで、カーヴでは今後、こういったワインの素朴な疑問を『ワインの科学』の著書でワイン博士こと清水健一さんに聞いていこうと思います。

今回は、「熟成によってワインにどんなことが起こっているのか?」といったテーマでお届けします。

ワイン初心者の方はもちろん、ワインをちょっと詳しく学んでみたい方もぜひご覧ください。
           
           

今回お話しを伺った方

15958

『ワインの科学』の著書でワイン博士こと清水健一さん

           
               

Q.そもそも、なぜワインを熟成させるのでしょうか?

17299           
「熟成させる一番のポイントは、赤ワインと白ワインともに、“味がまるくなる”というところでしょう。また、ワインにはブドウ由来の第一アロマ、発酵由来の第二アロマなどがありますが、第三のアロマである、“ブーケ”は熟成で生まれる香りです。
ワインの熟成させる理由はいろいろありますが、簡単に言うと“味わいをまるくして、ブーケを出す”ということが目的です。」
           
             

熟成と味のまろやかさについて

17298              

Q.赤ワインの熟成というと、「タンニン」や「アントシアニン」をイメージさせます。

          
「ちょっと前までは、赤ワインのポリフェノールは熟成によって重合するから味わいがまるくなる…と言われていたのですが、まったく違うことが近年分かってきています。
タンニンは分子量が大きいほど渋みが強くなり、分子量が小さいほど渋みが弱くなります。味わいがまるくなるのは、タンニンがくっつき合うのではなく、壊れてほかの成分と反応をするなどすることが関係している、ということです。」
           
            

Q.さまざまな成分と反応するんですか?

             
「もちろん反応はひとつだけではありませんが、典型的な反応をお伝えします。
通常、酸欠状態で赤ワインを熟成させた場合は、“タンニンとタンニンが結合”するため沈殿して渋みが粗い状態になります。一方、樽熟成など適度な酸素がある状態で熟成させた場合、タンニンがアセトアルデヒドを介して結合するため、安定に溶解し、渋みがまろやかになるのです。」
             
              

Q.赤ワインの味わいのまろやかさには、アセトアルデヒドが関係していたんですね。

          
「ちなみに、赤ワインの赤色の成分であるアントシアニンも全く一緒で、タンニンと同じくアセトアルデヒドを介することで色調が安定します。
アセトアルデヒドは二日酔いの原因成分としても有名ですが、発酵の過程において、ぶどう果汁から発酵でアルコールが出来る過程で必ずアセトアルデヒドを経るので、どんなワインにもアセトアルデヒドは含まれていますよ。」
            
              

白ワインの熟成について

17303             

Q.白ワインの熟成は、なぜシャルドネなのでしょうか?

            
「まず、シャルドネは個性が無いわけではありませんが、もともと香りの特徴がさほど無い品種です。しかし、“いかようにもできる品種”であり、いろいろなタイプのワインを造れるということです。
完璧な理由はわかりませんが、シャルドネは樽熟成に特に適した品種であり、最初はグレートなところはないのですが、ムルソーのように仕上がったものは素晴らしいものに生まれ変わるスゴさを持っています。」
             
             

Q.ほかの白品種は樽熟成されないのでしょうか?

           
「一部のソーヴィニヨン・ブランやリースリングなどは、少し樽を使うことで品質がぐっと良くなることもあります。ピノ・ブランもうまく使えば良くなるかもしれませんね。」
            
           

Q.樽熟成に適している条件などはあるのでしょうか?

           
「ある程度、ボディが必要でしょうね。
シャバシャバなワインだと、樽の強さに負けてしまって樽香ばかりがガンガンついてしまうワインに仕上がってしまいます。一昔前のカリフォルニアワインを想像してもらうと分かりやすいでしょう。あと、pH(酸度)は特に重要です。」
            
              

Q.pHですか?

          
「樽熟成させるためには、pHが低い…つまり、ワインの酸度がある程度高いことが重要です。
例えば、甲州などは酸度が低く本来は樽熟成に向きませんが、補酸を行なってカバーされています。熟成というのは、いわばワインと酸素の酸化反応です。完全な理由は分かりませんが、pHが高いワインは悪い方向の酸化反応を起こし、pHが低いワインは良い方向の酸化反応になるんですね。」
            
             

Q.そうなると、冷涼な地域で栽培されたブドウが良さそうですね。

          
「北海道のケルナーなんかは、樽熟成がうまくいっています。ドイツのモーゼルやライン川で造られるリースリングなども見事に熟成しますよね。これも、酸度の高さが関係しているからでしょう。」
        
            

瓶熟成について

17305            

Q.樽熟成を経た後、瓶熟成が行なわれますがどんな効果があるのでしょうか?

           
「エステル※の生成がもっとも大きな目的でしょう。品種によっていろいろなものが生成されます。
エステルではありませんが、ドイツのリースリングなどの熟成香は特に特徴的です。あのオイルっぽい感じは、良いリースリングにしか生まれません。苦手な人がいるようですが、私は大好きですね。」

※酸とアルコールとから、水がとれてできる化合物の総称。フルーティーな、良い香りが特徴。
           
              

Q.スクリューキャップとコルクで違いはありますか?

           
「コルクの場合、湿った状態では、ちょうど良い酸素が入るため瓶熟成が進みます。一方、スクリューキャップをしてしまうと、酸素不足のため、もうそこから熟成は見事に進まなくなりますね。」
         
        

Q.そうなると、品質維持にはスクリューキャップの方が良いと…

          
「これ以上、熟成を進める必要は無いというのであればスクリューキャップは優れていますが、瓶熟成を行なう目的であれば望ましくないと考えます。」
           
           

熟成期間について

17304            

Q.素朴な疑問なのですが、ワインの熟成期間はどのように決めているのでしょうか?

           
「最初からそのワインに適した熟成期間が分かる生産者は、あまりいないと思います。その時々のワインの品質によっても違うため、途中でサンプリングをしながら決めている生産者がほとんどでしょう。
A.O.C.などのワイン法で『○年以上の熟成が条件』など、熟成期間まで定められていますが、あれは間違っているわけです。ワインによって、熟成期間が変わってくるわけですから。」
            
            

Q.なるほど、そうなると経験がものを言いますね。

          
「長年、ワイン造りを経験していれば分かることもありますが、それでも都度サンプルしながら熟成期間は決めています。こればかりは、ワインの状態を見ながらですね。」
           
           

良い樽熟成を経た白ワイン

17297             

Q.良い熟成を経た白ワインの見分け方などありますか?

             
「樽熟成を経たワインを見る時は、やはり色でしょう。その理由を完全に掴みきれていないのですが、良い熟成を経たワインは、“黄色っぽい濃色”に仕上がっています。モンラッシェやムルソーなどがそうですよね。
一方、樽に負けたりした熟成は褐色がかっています。要するに、悪い方向に酸化しているわけです。」
           
           

Q.甲州しかり、そういった褐色系の白ワインはよく見ます。

          
「甲州で褐色化しているものは、もうダメでしょうね。」
         
          

Q.ちなみに、ソムリエ試験などで熟成期間を当てる項目などがあるのですが、あれって分かるものなのでしょうか?

            
「いや、わかりませんね。まず、品種によってもヴィンテージによっても、生産地、樽によっても変わりますからね。
仮に、同じ地域のカベルネ・ソーヴィニヨンを同列に並べるであれば分かるかもしれませんが、バラバラな産地と品種のワインをテイスティングして熟成期間を当てるのはちょっと…。ひとつの推理としては面白いでしょうが、あまり意味が無いと思います。」
           
           

蒸留酒の熟成

17295               

Q.ちなみに、蒸留酒の熟成は水素結合※が関係していると聞いているのですが?

            
「醸造酒も水素結合による同じ熟成反応が起こっているのですが、アルコール度数が低いためその割合はものすごく低いですね。
蒸留酒は、ざっくりと言って25-43%がアルコールですので、そのくらいのアルコールがないと水素結合による影響はあまり起こりません。」

※OHやNHなど電気陰性度の高い原子に共有結合した水素原子が,近傍の他の官能基の非共有電子対と非共有結合的に作る結合。 

参考:水素結合 - 理学のキーワード - 東京大学 大学院理学系研究科・理学部
           
          

Q.水素結合が関係する熟成について簡単に教えてください。

          
「例えば、水とアルコールでできた蒸留酒があるとしましょう。蒸留仕立てや熟成期間が短い場合、水とアルコールはバラバラになっているため、それを口に含むとアルコールが舌に触ってしまうため強く感じてしまいます。」
            
           

Q.確かに蒸留仕立ての酒はかなりキツいです。

              
「そこから熟成を経ていくと、段々アルコール同士が並び出します。
詳しく言うと、アルコール(エタノール)の化学式は『C2H5OH』ですが、まず水に溶けにくい『C2H5』部分同士が構造をつくります(これを疎水的相互作用による結合と呼びます)。そして、『OH』部分は水と混じりやすいので水と繋がっていきます。
最終的に舌に先にアルコール部分が触れるのではなく、水部分が触れるため、まろやかな味わいに感じるわけです。」
          
          

Q.難しいお話ですが、要するに蒸留酒の場合はアルコール部分がさまざまな反応により、水部分に覆われるような形となるため、味わいがまろやかに感じるようになるわけですね。

            
「品質によっても違いますが、良い蒸留酒は熟成が長ければ長いほど、高い品質になる傾向にあります。この構造には、かなり長い時間がかかりますね。私たちもいろいろと試しましたが、どれもダメでした。
やはり、多少熟成が速くなるという意味で、樽熟成が最も良いでしょう。熟成によって蒸留酒の味わいをまろやかにするには、本当に時間がかかるわけです。」
             
           

Q.ワインは、こういった反応は起こっているのでしょうか?

           
「ワインでも、起こっていないわけではないでしょうが、比率は少ないと考えられます。ただ、ポートワインは違うかもしれません。」
         
          

Q.確かにアルコール度数が高いですね。

17294             
「ポートワインは、アルコール度数が18度くらいですが、熟成酒のような熟成も起こっていると考えられます。紹興酒もアルコール度数が高いですが、双方に長持ちしますよね。50年以上経っているものでも良いものがたくさんある。ワインの熟成と、蒸留酒の熟成の中間といったところでしょうか。」
           
           

次は樽!?

17293             
今回、特に触れませんでしたが、熟成に大きな影響を与えているものに「樽」があります。
フレンチオークかアメリカンオークか、新樽か古樽か、焼き具合はどうか…など、どの樽を選んでワインを熟成するかで、仕上がりの品質は大きく変わるはずです。

「樽使いは経験値がものを言うだろう」と、清水さんもおっしゃっていましたが、若い生産者とベテラン生産者の違いがあるとすれば、この樽使いにありそうです。

次回は、樽について聞いてみたいと思います。

ぜひ、皆さんが知りたいことがあればカーヴ編集部にお問い合わせください。
         
            

関連コラム

          
・【ワインのおしごと_Vol.3】「ワインの科学」著者の清水 健一さんに聞く!

・もう一度立ち止まって考えよう「ミネラリティ問題」!『ワインの秘密』の著者 清水健一さんに聞く!

・ワインの殺菌効果は本当だった!「ワインの秘密」の著者、清水健一さんにその理由を聞く!

・【素朴な疑問】ワイン博士 清水健一さんに聞きました!白ワインは何で低温発酵なのか?
              
                

caveおすすめのワイン
  • 「ワインを買う」という行為を少しでも、より楽しくできればと願い・・
    caveスタッフが厳選した、毎月オススメのワインをお送りいたします。

    これまで、「赤ワイン」「白ワイン」以上のことはあまり分からなかった方々。
    なんとなく「買っては飲んで」を繰り返し、結局自分が好きなワインは何なのか、いまいちわからなかった方々。

    そんな様々な「わからない」を解決するための特典を多数ご用意しております!
    「ワインを買う」という行為を少しでも、より楽しくできればと願い・・
    caveスタッフが厳選した、毎月オススメのワインをお送りいたします。

    これまで、「赤ワイン」「白ワイン」以上のことはあまり分からなかった方々。
    なんとなく「買っては飲んで」を繰り返し、結局自分が好きなワインは何なのか、いまいちわからなかった方々。

    そんな様々な「わからない」を解決するための特典を多数ご用意しております!
CAVE THE SELECT
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。

The following two tabs change content below.

関連記事