【第4回】「醸し人九平次」がフランスでワイン造り!15代目久野九平次さんが語る「日本酒もワインも同じ醸造酒」の真意とは!?|カーヴ(Cave) -ワインがもっと楽しくなる!日本最大級のワインのレビューサイト

突撃リポート

【第4回】「醸し人九平次」がフランスでワイン造り!15代目久野九平次さんが語る「日本酒もワインも同じ醸造酒」の真意とは!?

              
米のヴィンテージと言われても、なかなかピンと来ない方もいるかもしれません。その味わいの違いなどについて、久野さんに詳しく教えてもらいました。
             
              

米のヴィンテージや産地による味の違い

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「米に花が咲いた頃、そこから2週間くらいの気温でそのヴィンテージの個性が決まって来ます。」



Q.二週間で?

「25~28度がひとつのベースになります。それよりも上なのか、下にいくのかで変わってきますね。上に行くとお米が硬くなり、下に行くと柔らかくなるのです。
2018年は、台風が9月頭に来てからぐっと気温が下がった。つまり、気温が下回ったことで、2018年ヴィンテージの米はすごく柔らかなお米になっています。お酒の初期の段階から、熟してグラマラスな感じです。」



Q.そういった違いが米にも出てくるんですね。
              

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「例えば、新潟のような東北地方の場合、田植えするサイクルとして8月に収穫を迎えます。9月の声を聞くとぐっと気温が下がる。米というのは気温が15度以下になると、もういくら待っても熟しません。劣化するばかりです。だからこそ、できるだけ早く収穫したいわけです。
新潟は7月頃に花が咲きますが、7月から8月にかけては夏真っ盛りですよね。もともと性質的に硬い米である五百万石などは、さらに気温が高くなるため硬くなり、味わいが淡麗になるわけです。」



Q.まさに、田んぼのドラマがそこにはある。

「そう、こういった話から米、日本酒を見つめてもらえば田んぼのドラマがあることが理解できるでしょう。
近頃、『酒ディプロマ』の認定試験ができて、日本ソムリエ協会さんが大きな第一歩を踏み出してくれたな、と思っているんですが、いかんせん米から来る“なぜ?”が、ひもとかれていない。どうしても、造りにほとんどが割かれていますし、蔵の中で起こっていること、酒造りのプロセスばかりが注目されがちです。
米からのドラマを知れば、日本酒はワインと同じであり、もっとわかりやすくなるはず。そこが今、すっぽりと抜け落ちてしまっている部分なのではないでしょうか。」
             
             

最高のヴィンテージは2014年

              
「まず、前提として日本酒で最も原価がかかっているのは何だと思いますか?

当然、“米”ですよ。

仮に、人的アタックで味わいが逆転するのであれば、米など何を使っても良いことになります。
ブドウでもそうですが、並級ブドウがグランクリュのブドウの味わいに変わるのであれば、誰も苦労しませんよね。」



Q.米の質、これを忘れがちです。

「いいヴィンテージのワインは、余韻がとにかく長いでしょう。米も全く一緒ですよ。余韻が長く、酸も違う。だから、長期熟成がかかる。形が崩れずに良き熟成を見せていくんです。」



Q.ちなみに、今のところのビッグヴィンテージはありましたか?
            

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「2010年から田んぼを始めていますが、今のところ一回しかありませんでした。それが、2014年です。
とにかく、このヴィンテージはエロチックでしたね。田んぼの段階で、その年の気温の推移なんかを見て“今年はいけそうだ!”と分かるんです。
とにかく、一粒がめちゃくちゃ大きい。皆さんには分からないかもしれませんが、私たちには相当大きく見えるんです。
また手触りに艶がありしっとりしていたんです。ですからそこにエロスを感じたんです。変態ですよね!お米にエロスを感じるなんて!」



Q.興奮しますね。
              

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「2014年ヴィンテージの米は、洗って蒸したときの手の感触がエロチックでしたね。
ダメなヴィンテージの時は貧弱なんですよ。グラマラスな感じ、上品なグラマラスな印象でした。ワインにもあるはずですよ、この感覚は。
米という存在感が身近過ぎると、こういった部分に気がつかない。自分たちでリアルに米を育てると、こういったところに気がつくし、同じ米が全く別のものに映る。ワインも同じですよね。身にしみて、理解できましたよ。」
              
             

ドメーヌ クヘイジについて

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久野さんのアツいお話から、日本酒にとって、どれだけ米が重要な原料であるか、あらためて理解いただけたと思います。さて、フランスでのワイン造りは今、どうなっているのでしょうか?


Q.瓶詰めはされましたか?

「16、17年と瓶詰めしました。
実は、もう6年もブルゴーニュでやってるんですよ。蔵の一番古参のスタッフが今、ブルゴーニュで頑張っていますが、1年目は語学の学校に通わせて、2、3年目は研修。その後、モレ・サン・ドニに醸造所を探し出し、16年は買いブドウでいいからやろう、ということで始まりました。
ただし、16年はとにかく厳しい年だったんで、わずか3樽分しか購入することができませんでした。」



Q.一から、というのが驚きます。
              

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「2016年の年末、畑の売りの話が出たので、2.5haの畑を購入。醸造所はグランクリュ街道にあるんですが、畑は国道を下っていったところにある並級畑です。
とはいえ、どんな畑でもいいからやるぞ!ということで、購入しました。植えられていたのは、ピノ・ノワールとアリゴテです。」



Q.2018年はどうでしたか?
             

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「2018年は、豊作だったんで買いブドウのパターンも増えました。白だったらムルソーのブドウも分けてもらえるようになりましたね。
             
               
              

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▲ 2018年4月には新たに新たに1ha(約3000坪)の田圃を取得

               
“石の上にも三年”ということわざがありますが、よくできた言葉だと思いますよ。
日本酒においては、8名のスタッフをお米の栽培の時期に合わせて、自社で持っている田んぼがある地域に移住させているのですが、最初は、“このお兄ちゃんたち、続くかな?”という目線で見られていました。
しかし、3年ほどやり続けていると、“本気だな。若いけど、頑張っているじゃあないか”ということで、田んぼを譲ると言ってくる人たちもあらわれたんです。
まず、3年くらいは努力しないと、地域に溶け込めないんですね。」



Q.今では、モレ・サン・ドニにも溶け込みつつある?
             

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「ブルゴーニュも同じですよ。
なんだかんだで田舎ですし、閉鎖的な部分もあります。また、ブルゴーニュに中国のお金が入ってきた時期もあったわけで、我々も最初はそういった目線で見られていたのかもしれません。
しかし近頃は、“投機目的じゃない。どうやら、こいつらは違うぞ”といった感じで、地域に根付こうとしていることが理解され始めてきている状態ですね。これからも、実直に力を入れていきますよ。」
              
              

お酒を飲んでもらうには?

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Q.近頃、日本酒の市場が厳しいと聞きます。

「僕ら造り手の立場から言うと、単純に日本酒にもっと魅力があれば振り向いてもらえると思っています。今、厳しいのであれば、それは日本酒に魅力が足りないから。中身をふくめて、日本酒はもっと魅力のあるお酒だ、ということを僕らがもっと提案していかなければいけないと思っています。」


Q.飲み馴れていない方にも感動を与える酒でありたい?
             

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「お客さまは、分かっていないわけではないんです。僕らは、ある程度日本酒のことを知っているので、いろいろ言葉に置き換えることができるように訓練されています。
しかし、圧倒的に日本酒を飲まない方であっても、日本酒に魅力があれば、必ず手を伸ばしてくれると信じているんです。お客さまが健全なジャッジをしてくれるという事を信じられなければ、造り手としてお酒造りは続けられませんよ。」


Q.輸出についてはどうでしょうか?

「正直、まだ日本酒は世界基準に寄り添っていないと感じています。もちろん、僕自身日本酒を愛してやまない人間のひとりですよ。
しかし、本当に残念だけど…日本酒は世界にとって最高の飲み物ではないんです。それは、はっきりと数字が物語っています。
ブルゴーニュの有名銘柄のワインであれば、1本10万、20万円でも手を伸ばす人たちは当たり前にいますが、日本酒はどうでしょう?いますか?この現実を、真摯に僕らは受け止めなければいけないんです。」


Q.お話を聞いて、「醸し人九平次」がフランスでワイン造りをする理由が、理解できた気がします。
              

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「どうにかしたい、行動したい。この現実を直視するために、僕たちはフランスでワインを造ってしまったんですね。ネットや本などに出ている二次元の答えではなく、リアルな三次元の答え。リアルなワイン造りの体験が、必ず日本酒の価値を向上させると信じています。
ワインと言う巨漢の中に飛び込む事で、何か日本酒に頂けるヒントがある筈だと考えたのです。」
             
             

取材を終えて

            
日本酒屋が、なぜフランスの地でワインを造るのか。久野さんのあくなき挑戦は続きます。

今回、もっとも身にしみてわかったのは、なぜ自分たち飲み手の多くは、「米」について追求しようとしてこなかったのだろうか、ということでした。

それは、久野さんが何度も言うように、“当たり前過ぎる存在で、ディスカバーしようという発想も無かった”というのが理由かもしれません。

ワイン好きとしては、「ドメーヌ クヘイジ」を早く口にしたい…という思いが強いのですが、それより先にあらためてヴィンテージごとに「醸し人九平次」を飲み比べてしてみたいと思っています。

皆さんの日本酒の選び方に大きな影響を与えたであろう、久野さんのお話。

ワインはブドウ、そして日本酒は米。同じ醸造酒を、飲み手も理解し、盛り上げていきましょう!


【ご参考】
醸し人九平次 KUHEIJI 萬乗醸造


Domaine Kuheiji / ドメーヌ クヘイジ

              

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