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豆知識

【第1回】「醸し人九平次」がフランスでワイン造り!15代目久野九平次さんが語る「日本酒もワインも同じ醸造酒」の真意とは!?

           
萬乗醸造が醸す日本酒「醸し人九平次」。ワインを愛飲している方はもちろん、酒を愛する人であれば知らぬ者はいない銘酒のひとつです。

さて、そんな「醸し人九平次」なのですが、数年前からフランス ブルゴーニュ地方のモレ・サン・ドニを拠点に「ドメーヌ クヘイジ」という名でワイン造りを行っていることをご存知だったでしょうか。

今回、蔵のある愛知県名古屋市の萬乗醸造へ。

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醸造家の15代目久野 九平治さんに「ドメーヌ クヘイジ」については勿論のこと、「日本酒もワインも同じ醸造酒」という観点から興味深いお話を聞いてきました。

これを読み終わった頃には、日本酒という醸造酒の見方が大きく変わっていると思います。

「日本酒とワインは、同じである。」

ぜひ、最後までお楽しみください!
           
              

ワイン造りを始めた理由

            
Q.そもそも、なぜ日本酒蔵元がブルゴーニュでワイン造りをはじめたのでしょうか?
              

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「皆さんの目線から見て“日本酒とワイン”は、非常にかけ離れた存在と認識されているかも知れません。しかし、二つとも同じ醸造酒です。実は同じ摂理でできあがっているんです。
『皆さんの認識の乖離を、埋めたい!』とリアルにワインを造っていない奴が幾ら吠えても、皆さんに説得力がないですよね!
机上の勉強・論説ではなく、リアルに携わることでしか得られないと思うのです。『ネっ、日本酒もワインも同じでしょ!』と。」
       
            
             
Q.それで、ワインの本場であるブルゴーニュに?
              

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「分かりやすく言うと、日本酒とワインは“米ジュースとブドウジュースの差”がありますが“アルコール発酵”という醸造学の視点からは、原理原則は一緒ということです。
弊社は『日本酒の価値の創造と向上』をテーマにしています。しかし日本酒はまだ、世界のマーケットでちゃんと認知されていないに等しく、誤解されて捉えられてるケースが多々あります。
私の中では、日本酒もワインと同じなんです。ワインの造り手の皆さんが言っていることは日本酒においても同じなのです。それを証明するためには、国内ではなく本場でやらないと説得力が無い。
そこで、ワインの人たちが言っていることをこの目で見て、聞いて、体験して、リアルな体感から何が本当なのか知りたいと思ったんです。
何故なら私は“売り手”でもありませんし、“ソムリエ”でもありません。私は“造り手”なのです
造る行為の延長にしか、私の発言と存在と価値は、認められない。そして説得力がない。だから「造る」のです。」



Q.日本酒とワインを同じ視点で捉える。

「日本酒で1万円は高いと思われますが、ワインにはそういったイメージはありませんよね。その“価値の差”を圧縮したいんです。
ワインは、ブドウによって価値が大きく変わりますが、日本酒の米もそれは一緒。造り手として、リアルにワインを造っている私が言うのだから、ブドウ栽培で良いとされるアナウンス。それは米栽培においても同じということを証明していきたいと思っています。」
             
            

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ドメーヌというスタイル

            
Q.ワインは「ドメーヌ」というスタイルですが、米づくりがその根底に?
                  

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「まず、私たちが米づくりを自分たちではじめたのが、2010年。十数年前に日本酒をフランスに伝えに行ったときに、ソムリエやシェフたちが、私に質問してくるんです。“君たちは、米をどうしているのか?”と。」



Q.ワインに置き換えれば、たしかにブドウの話になりますね。

「米については本で勉強していましたし、当時付き合っていた農家さんからも情報を聞いて何となくヴィンテージも理解していましたが、ドメーヌとしてブドウ栽培をしているワイン生産者のリアルな行為と比較すると、説得力がなく、後ろめたさを感じたんです。」



Q.そこでまず、米づくりから?
             

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「今、ネットや本でいろいろな知識は簡単に拾えますよね。私も活用しますし、蔵の若い人たちも調べものがあれば、こういった方法で情報にアクセスします。
しかし、それは二次元の世界。リアルに三次元で体験することでしか、私達の納得感・腑に落ちる感覚も得れません。そして皆さんへの説得力も生まれないと思ったんです。
またワインの造り手やシェフたちが、どういった目線で口に入るものを捉えているのか…。それは主原料なんです。置き換えるとお米なんです。
今まで日本酒というのは、農家が育てた米を買い上げるのが当たり前のスタイルだったのですが、ワインの世界観にとって当たり前のことが、日本酒屋ではできていなかったんです。」



Q.新しい発見ができた、ということですか?

DISCOVER(ディスカバー)という言葉がありますが、これは“発見”という意味ですよね。“ディスる”なんてよく使われていますが、ディスは否定形。ディスカバーは、何も無いところから新しく発見するのではなく、すでにあるものにカバーが掛かっていてそのカバーを取ることで新たな発見をする、という語源なんだそうです。
日本は、昔からあるものであればあるほどに、このカバーが厚いと思っています。日本酒もそのひとつですが、私たちが物心ついた頃から食べている、当たり前の存在の“米”に対して、厚いカバーがかかっていたんです。」



Q.そういった経験がドメーヌというスタイルに繋がっていたんですね。

「米を自分たちが育てていった結果、今年のヴィンテージの特徴はこうだとSAKEに添えて皆さんにお届けする。こういった流れになったら胸を張って、自分たちの造る酒について、米について語れます。シャトー型ではない、ドメーヌ型の仕事をして日本酒が生まれているんですよ…と。」
              
              

田んぼのドラマ

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Q.日本酒というと、「醸造技術」が注目されるイメージです。

「ワインの造り手は、“オレはこの地で、こうブドウを育てて、このワインを造ったんだ”と言います。」100人いれば100通りのブドウの栽培方があります。また醸造法もしかりです。
しかし皆共通してリアルな畑で起きる出来事を、各人の言葉でそれをワインに乗せて語ってくれます。そしてそこには、ブドウ畑の中のドラマがあります。
それについて正解か?正解じゃないか?は、どちらでもいいのです。むしろ正解はないのです。
翻って、今までの日本酒はどうだったでしょうか。ほとんど、蔵の中のドラマばかり聞いてもらっていました。もちろん、毎年、蔵の中でのドラマはありますが、田んぼのドラマは今まで語られません
逆に、ワインの場合はワイナリーの中のドラマはそこまで言わないですよね。」



Q.田んぼのドラマ。興味がそそられますが…。
                 

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「例えば、2010年は埼玉の熊谷で連日40度を超える暑い日が続きました。そのくらいの年から、国内でもゲリラ豪雨や亜熱帯化、温暖化なんて叫ばれ始めたはずです。
こういった年には、高温障害といって、ちゃんとデンプンにならず非常に硬い米になってしまうんです。硬いものは、溶けにくいですよね。溶けないと味・香が出ない。
つまり、こういったヴィンテージの日本酒の味わいは非常にスレンダーになるんです。同じ兵庫県の山田錦であっても、毎年、ドラマがちゃんとあるんですよ。」



Q.今、仕込みは2018年の米ですよね?

「2018年は、皆さん覚えていると思いますが、台風21号の影響で関西空港に船が衝突しましたよね。これが、9月の頭の話です。
米というのは花を咲かせるのですが、ちょうどその時期だったので、結果“結実不良”になりました。ワインもリリース前からブドウ栽培期の天候によって不作か否かなどが予想されていますが、米もまったく一緒です。2018年は、兵庫や岡山は非常に不作で、例年より20%以下の収穫量となりました。」



Q.20%以下ですか…。

「知らなかったでしょ?日本酒業界の方であれば別ですが、作況指数として新聞の片隅に掲載された程度です。ワインの場合、世界中が大騒ぎするんですけどね…。」


Q.米のヴィンテージのお話を聞けばより、ワインと同様であることがわかります。
             

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「米も、天候に抗えないところがあって毎年できています。多くの方は、米を見てもすべて小さな粒にしか見えないかもしれませんが、私達にはピンポン球やゴルフボール、テニスボールくらいの大きさや硬さ、やわらかさというように感じられます。それは、自分たちで米を育てているからこそなんです。
ワインが今年のヴィンテージを語れるのは、自分でブドウを栽培しているからこそで、日本酒にもその大前提に取り込んで、お米からのドラマをSAKEに添えると、皆さんにとって新たなチョイス、楽しみの方の目線になると思うのです。
それが、弊社にとっても新たな日本酒の価値を創造し、向上することになると思うのです。」
               
                 

ワインは圧倒的世界基準

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日本酒の価値向上を目指している萬乗醸造「醸し人九平次」。
世界的に認められている素晴らしい日本酒のひとつであることは疑う余地のないところですが、久野さん曰く、日本酒はまだまだ世界基準な酒ではないそうです。



Q.近頃、日本酒も輸出で盛り上がっていますね。

「おっしゃるとおり、今日本酒の輸出が伸びているというアナウンスが広がっていますが、せいぜい直近で輸出額は200億円ほど。
フランスが一年にワインを外に出している金額が1兆円ほどですので、その規模は桁違いです。」



Q.それは、フランスに行っても実感されますか?

「私はフランスを中心に活動をしていますが、ワインが圧倒的な世界基準であることを思い知らされます。日本酒が世界で盛り上がっているといっても、ゼロが二つ違うわけで、現実の差は大きいです。」



Q.だからこそ、価値向上を?
               
「造り手として、“なぜワインが世界でそこまで楽しまれている酒なのか”、その訳を知りたい。それは、本やネットは話だけでは分からないから、“じゃぁ、やってみよう。”
そういった気持ちで、ワイン造りもはじめています。」



Q.そこでひるんだり、諦めたりしなかったんですね。
                        

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「諦めきれませんよ。
フランスに行って、日本酒をフランス料理の人たちに紹介し始めてから、彼らからいろいろなことを教えてもらっています。アドバイスというのではなく、自分の足りないところを鏡となって見せつけられる、という感じでしょうか。
彼らの素朴な日本酒に対する投げかけから、自分の至らなさに気が付くんです。彼らの当たり前の目線が実は日本酒側には当たり前になっていないことが多々ある。
「カバー」って、置き換えると「当たり前」と言う単語かも知れません。ワインの当たり前との差を知り、それを埋めることで、皆さんに新たなSAKEをお届け出来ると思うんです」
              
               

ワイン造りのリアルな体験が、日本酒造りのヒントに

              
ワインという品を、日本酒にもっと入れこんでいきたいと語る久野さん。自分で米を育てているということを伝えれば、フランスの方たちは、それについてもっと知ろうと思ってくれるそうです。
逆に、今年のヴィンテージについて米のことを語れなければ、誰も耳を傾けてくれないとのこと。

「醸造の前に、ブドウの個性・ヴィンテージでワインというものを語っていく。そう思ったんです。
彼らが畑と醸造所の中で当たり前に行っていることを、日本酒の造り手もやってみる。この意識で始めたワイン造りなら、必ず日本酒を造る上で何かしらのヒントを貰えると思ったんです。」




第一回では、ワイン造りを始めた理由やフランスでの活動の際に久野さんが感じたこと、田んぼのドラマを語りたい、ということなどをインタビューでお伝えしました。第2回は、「日本酒もワインも同じ醸造酒」といテーマでお話いただいています。


【ご参考】

醸し人九平次 KUHEIJI 萬乗醸造
             
              

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