山梨県産スパークリングワインのレベルが上がるかも!?適した原酒ワインの生成が研究されていた!|カーヴ(Cave) -ワインがもっと楽しくなる!日本最大級のワインのレビューサイト

豆知識

山梨県産スパークリングワインのレベルが上がるかも!?適した原酒ワインの生成が研究されていた!

            
年末が近づくにつれて、ワイン業界で必ず話題の中心になるカテゴリが、スパークリグワイン。

毎年、この時期にシャンパーニュはじめ、各国のスパークリグワインの売り上げがぐっと高まるわけですが、今年は個人的に“日本で造られたスパークリグワイン”を楽しもうかな、と考えています。

その理由ですが、中央葡萄酒「グレイス エクストラブリュット」をはじめ、近年の日本のスパークリグワインはその品質を確実に高めており、「非常に面白い」からです。

さて、山梨県では以前から県内産スパークリングワインの高品質化を目指し、日々研究が続けられていることをご存知でしょうか。

今コラムでは、山梨県でスパークリングワインに適した原酒が生成できた、という小ネタを紹介します。

ぜひ、興味がある方は読み進めてみてください。
           
            

山梨県産スパークリグワインの品質の底上げ!

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冒頭でお伝えした通り、近年の日本のスパークリングワインの品質は高まっています。

完成したワインに炭酸ガスを注入したカジュアルなものではなく、シャンパーニュ同様、瓶内二次発酵を経たスパークリングワインも多く、“こんなレベルのワインが日本から生まれているのか”と、感動せざるを得ない品質のワインに出会う機会も増えました。

さて、製法の違いによってそれぞれの良さはあるものの、一般的には品質の高いスパークリングワインを造るのであれば、瓶内二次発酵で造られたものが良いとされています。

日本のワイン製造における重要産地である山梨県では、そんな瓶内二次発酵で造られる県内産スパークリングワインの高品質化を目的に、それに適した原酒造りの研究が以前より行われています。

今回ご紹介したい研究は、恩田氏、長沼氏、小嶋氏による「山梨県スパークリングワインの高品質化に関する研究」

どのような研究成果があったのか、論文から抜粋しながら報告していきます。
           
             

原酒ワインが重要!

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以前、シャンパーニュの各メゾンはノンヴィンテージにこだわりを強く持っている過去のコラムはこちら)という内容のコラムを出しましたが、高品質なスパークリングワインを造るのであれば、それに適した原酒ワインの存在は必至です。

ご存知の通り、ヴィンテージをラベル記載する高級シャンパーニュは素晴らしいものですが、気候などに左右されやすく、メゾンの顔となるのは通年製造されているノンヴィンテージだ、という意見もあります。

“そうでしょうか…”と思われる方は、恩田匠氏がシャンパーニュを訪れ研修をしてきた論文がまとめられているので、そちらをご覧いただければ、各メゾンがどれだけリザーブワイン(原酒ワイン)造りにこだわっているか、お分かりいただけると思います。
(日本醸造協会誌 シャンパーニュ地方におけるシャンパーニュづくり(前編)はこちら)

ちなみに、どのメゾンもノンヴィンテージに使う原酒の割合などは門外不出の秘密だそうで、公式発表は絶対にしない、ということです(信頼に値する人には暴露するかもしれません)。

すでに、山梨県のワインセンターでも研究によって安定した瓶内二次発酵を製造するための基礎的データは蓄積されており、普及には至っているそうですが、さらなる高品質化を目指す場合、その原酒ワインのブレンド比率云々、そもそもスパークリングワインに適した原酒を製造するところから始めないといけないことが検討されていました。

そこで恩田氏らが取組んだのが、「甲州」「シャルドネ」「マスカット・ベーリーA」「ピノ・ノワール」を原料にした、山梨県でのスパークリグワイン用の原酒ワインの製造。

この原酒造りは成功したのでしょうか…。
            
            

徹底した微調整!

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スパークリングワインを造る場合、とりあえず白ワインを造ればいい、というわけではなく、それに適した品質のものを微調整し、製造する必要があります。

恩田氏らは、甲州市と明野地区にある畑で収穫されたブドウを使用。

除梗破砕を行わずに水圧式手動圧搾機にブドウを投入し、果汁の分画を行い、さらに圧搾の最初に流れ出る0.125ℓ/100kgをフリーラン果汁として分画しました。

そして、4回の圧搾と圧搾機内のブドウのほぐし操作を経る過程で、1時間半ほどかけて得た51.25ℓ/100kg分を「キュベ」とし、さらに最大圧力を1.3気圧まであげるサイクルを繰り返して3回の圧搾とほぐし操作を継続して得られた1.25ℓ/100kgを「タイユ」として使用したようです。

甲州のみは、空気圧式圧搾機を用いて、内蔵のスパークリングワイン原料用プログラムによって圧搾操作が行われました。

その後、13℃で一晩放置してデブルバージュ。どうやら原酒ワインは清澄し過ぎるのも問題なため、濁土計を用いて50NTU未満になるようだった場合、清澄化された果汁に沈殿物を戻して50NTUになるように調整。

さらに、比重換算から得られる転化糖分が19%になるように、ショ糖も添加するなど、細部まで徹底して調整が行われました。
          
             

醸造も微調整!

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醸造においても、微調整は続きます。

まず、酵母はシャンパーニュ製造に推奨されている4菌株酵母のひとつ「VITILEVURE QUARTZ」を使用。乾燥酵母剤は、0.1g/ℓになるように軽量し、酵母の10倍量のブドウ果汁および熱水を等量混和した約35℃の溶液中、約20分間水和処理を起こった後、原料果汁に添加されました。

実は、シャンパーニュ製造における白ワイン醸造は、マロラティック発酵を行ってリンゴ酸を完全に消費させることが必須であるとのことで、同研究においてもマロラティック発酵実施。

リンゴ酸が検出されなくなったことを確認した後、生成されたワインは1週間シュール・リー状態で放置され、その後オリ引きされます。

その後、総亜硫酸10mg/ℓになるように、ピロ亜硫酸カリウムを添加し、12℃で保存され、−4℃で1種間撹拌。

2〜3日の静置期間後、オリ引き、フィルターを用いて精密ろ過した後、原酒ワインとして調整されました。
           
            

結果、スパークリングワインに適した原酒が!

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さて、この緻密な作業の結果、甲州、シャルドネ、マスカット・ベーリーA、ピノ・ノワールの4品種共に、スパークリングワインの原酒ワインとして適したものになったと恩田氏らは報告しています。

まず、速やかなアルコール発酵が達成され、ブドウ糖と果糖は不検出(再発酵の危険性が無い)。

そして、コイノキュレーション法によるマロラティック発酵によってリンゴ酸も完全に乳酸に変換され不検出に。

19度補糖によって平均11.0%弱のアルコールが製成に成功。

この研究によって、山梨県(他県でも…)における高品質なスパークリングワインの製造が可能になるかも…という結果となったのです。
           
             

日々研究され、品質を高めていく日本ワイン!

           
ここでは、山梨県産の高品質スパークリングワイン製造に必要となる、原酒造りの研究結果についてお伝えしました。

我々、飲み手にとっては裏側の研究ですので分かりにくいところも多々ありますが、「美味しいスパークリングワインを安定的に供給したい!」というワイン関係者たちのアツい思いが伝わってくる、素晴らしい研究内容だと個人的に感じています。

今年の冬(通年が好ましいが…)は、山梨県産、日本産のスパークリングワインで乾杯しましょう!


【ご参考】

山梨県産スパークリングワインの高品質化に関する研究
             
              

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ナカゴミ コウイチ

ナカゴミ コウイチ

山梨県出身、甲州ワイン育ちのフリーライターです。
ラジオ関係、ファッション関係のライティングをしながら、大好きなワインのお仕事も精力的に行っています。
ワインは日常的に楽しむ飲み物であるということを広く伝えて行くために活動を続けています。

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