産地を名乗るための条件が記載されている「生産基準書」を知ろう!|カーヴ(Cave) -ワインがもっと楽しくなる!日本最大級のワインのレビューサイト

豆知識

産地を名乗るための条件が記載されている「生産基準書」を知ろう!

              
原産地呼称。
ワインを学ばれている方はもちろん、ワイン愛好家の方であれば知らない方はいないであろう、ワインに関する規則のひとつです。

EU法の「保護原産地呼称(A.O.P.)」や地理的表示保護ワインである「I.G.P.」、フランスの「アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(A.O.C.)」、イタリアの「デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・コントロラッータ(D.O.C.)」などがそれに該当しています。

さて、このA.O.P.やI.G.P.。

仮に、私たちがEUのとある産地を新しくA.O.P.やI.G.P.認定してもらい、その産地名を名乗ったワインを売ろうと思った場合、さまざまな手続きや困難を乗り越える必要があるようです。

そんな産地を保護するための手続きの中でも重要視されているのが、「生産基準書」の作成。

少々マニアックな内容ですが、「生産者団体がA.O.C.登録に向けて動き出している」というニュースを見た時に、少しだけ理解が深まると思います。

ここでは、『はじめてのワイン法(蛯原健介 著)』などを参考に、保護されるための基準である、「生産基準書」について解説していきしょう。
              
               

生産基準書の作成がとても重要

              
A.O.P.やI.G.P.など、地理的表示付きワインとして保護されるためには、さまざまな手続きが必要です。

その中で、最も重要な手続きが「生産基準書」であり、それによって“この名称を保護すべきだ”という理由を証明しなければなりません。

EUのワイン法では、生産基準書に記載されるべきこととして、こういった事項が列挙されています。
                 
                   

生産基準書に記載されるべき事項

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1.保護されるべき名称

2.ワインの特徴に関する説明

3.醸造や生産に関する特別なルール(必要な場合)

4.対象となる地理的区域の範囲

5.1ヘクタール当たりの最大収量

6.ブドウ品種名

7.ワインの品質および特性が、本質的または排他的に、固有の自然的・人的要素およぼ特別な地理的環境が由来することの説明(A.O.P.ワインの場合)、またはその他の特性は、当該地理的由来に帰せられるべき品質、社会的評価、またはその他の特性を有することの説明(IGPワインの場合)

8.国内法・EU法により適用される諸条件、または、加盟国もしくは原産地呼称・地理的表示の管理を担当する機関の定めた諸条件(必要な場合)

9.生産基準書の遵守を監視する組織または機関の名称および所在地、当該機関の任務に関する詳細な説明

              
                

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日頃から、仕事でこういった文書を作成しなれている人は理解しやすいですが、ブドウ栽培とワイン醸造の仕事を主体でやっている方には、とてもハードルが高いように感じます。

とにかく、「家の裏で育ったブドウはとても甘く、香り高い。さらに、それで醸したワインをワイン好きの知り合いに飲ませたら大絶賛された。なんと、昨年も、今年もだぞ。儲かりそうだし、近所のブドウ栽培農家もチャンス。だから、この畑の名称を保護してくれ」という、簡単な内容ではダメなようです。
              
                 

A.O.C.マルゴーはどう決められているのか?

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ここからは、「2011年のA.O.C.マルゴーの生産基準(高橋悌二 仮訳)」を参考に、A.O.C.マルゴーの生産基準を例にして、前述したいくつかの生産基準に関連する事柄を簡単に見ていきましょう。

では、「対象となる地理的区域の範囲」にあたる部分。

マルゴーの場合、

1.地理的範囲

ブドウの収穫、醸造、育成及び熟成はジロンド県の次の村で行わなければならない。アルザック、カントナック、ラバルド、マルゴー、スーサン

2.決定された畑の地域

ワインは、2007年3月16日のINAOの関係委員会において認められた生産の畑地域にあるブドウのみによるものでなければならない。

3.近接地域

醸造、育成及び熟成のために、例外として定められた近接地域は、ジロンド県の次の村の土地でなければならない。アルサン、アヴァンザン、ラマルク、リュドン・メドック、マコーおよびルピアン・メドック

となっています。

また、ブドウ品種に関しては、

1.ワインは、次の品種によるものでなければならない。

カベルネ・フランN、カベルネ・ソーヴィニョンN、カルムネールN、コットN(又はマルベック)、メルローN、プティ・ベルドーN

とされています。品種の割合に関しては、特に定められていません。
              
                 

               
そのほか、植栽密度はヘクタールあたり最低7,000本の植栽密度であること、剪定基準は遅くとも葉が出そろった時期までになされなければならない、畑の平均最高収量は、ヘクタール当たり9,500kgなど、ブドウ栽培に関しても厳しく定められています。

また、生産基準書には、マルゴーの自然的要素や人的要素など、こと細かにこの地のワインにおける歴史なども記載されているなど、抜かりなく「A.O.C.マルゴー」の生産基準書は作成されているようです。

自分で、A.O.P.への保護申請を出すのはもちろん、もともとあるA.O.C.の基準に合わせたワインを造るのも、かなり苦労がありそうです。

興味がある方は、このA.O.C.マルゴーの生産基準書をじっくりと読んでみてはいかがでしょうか。
               
                

官能上の記述

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生産基準書には、「ワインの特徴に関する説明」というものがあります。
前述したA.O.C.マルゴー生産基準書にも記載されていますが、必ずその産地のワインの特徴を説明しなければなりません。

例えば、この産地は赤ワインのスティルワインのみに認められるとか、スパークリングワインのみ残糖分を記載しなければいけない…などです。

また、既得アルコール濃度(実際にワイン中に含有されているアルコール濃度)が何%以上でないといけない、という部分も重要。


そして、独特なのが「官能上の記述」という項目です。
              

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I.G.P.では任意ながら、A.O.P.の場合はすべて官能審査を実施することとなっており、全ての部分をクリアしていても、この「官能上の記述」の特徴に合致していない場合、A.O.P.の使用は不可となります。

「白ワインは、使用された品種によりフルーティーかつ柔らかなストラクチャーを特徴とする」などと記載されていた場合、それにどうも合わない…という白ワインは、この生産基準書でいうA.O.P.の使用はできない、ということです。

どこまで厳しく審査されるのかは、産地によって大きく変わるでしょうが、「この産地は全体的にエレガント」だったり、「この産地は力強い赤が多い」など、徹底して審査されているのであれば、そのA.O.P.に該当する産地の傾向は掴みやすくなります。

「多様性が無くなる」という意見もありますが、一般消費者にとってみればワインを選ぶ際に非常に役立つポイントにはなりそうです。
                
                

アルザス「プルミエ・クリュ」が動き出している

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ある名称をA.O.P.やI.G.P.で保護する登録の申請ができるのは、原則として「生産者団体」に限られています(生産者単独で申請できる例外もアリ)。

実は、フランスでは新しいA.O.C.登録に向けて活動しているさまざまな生産者団体があり、どうにかして自分たちが造るワインをより高く評価してもらいたい、ということで日々登録に向けて奮闘しているようです。

そんな中で、今世界的に注目されているのが、アルザス「プルミエ・クリュ」の設立に向けての動きです。

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アルザスには、「A.O.C.アルザス」と「A.O.C.アルザス・グラン・クリュ」の二階級しかなく、それはそれでシンプルで分かりやすいものでした。

しかし、この二階級では語りきれないほどに優良な区画が多く、そういった区画が「プルミエ・クリュ」として登録されることで、よりアルザスのテロワールが詳細に語られることになる、と期待されています。

2016年7月に、アルザスワイン生産者協会は、プルミエ・クリュの正式要請を「INAO」に提出し、同クリュの候補となる150地区の構成要件を作成している、とのことです。

また、アルザスはピノ・ノワールがグラン・クリュを名乗るための品種に認められていないため、こちらの登録も今後期待したいところ。

もちろん、ここでお伝えした生産基準書の内容以上に実際の申請内容は複雑ですが、「申請に動き出している」というニュースを聞いた時、以前より少しだけ深く理解できるのではないでしょうか。
               
                 

日本は今後どうなるのか?

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ここでは、「生産基準書」について、簡単ではありますが解説してきました。

さて、日本でも、10月30日に日本ワインと国産ワインの違いを明確化するための、新しいワインラベル表示ルールが厳格化されます。

日本には、ワイン業界の自主基準による表示をはじめ、山梨県や山形県、長野県など産地による独自ルールなどがありますが、日本全土のワイン産地を包括する意味での「生産基準」は、今後どのように厳格化されていくのでしょうか。

ぜひ、法律や基準の側面からも、ワインを楽しんでみてください。


参考

           
・はじめてのワイン法 蛯原 健介著

・A.O.C.「マルゴー」の生産基準 (2011 年) 髙橋梯二 仮訳
               
                 

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