ワインのアルコール除去について|カーヴ(Cave) -ワインがもっと楽しくなる!日本最大級のワインのレビューサイト

豆知識

ワインのアルコール除去について

                
手塩にかけて育てたブドウを手摘みで収穫し、手作業で除梗。
香気成分の揮発を守るため、発酵前のマストは徹底して低温で管理した後、ブドウの果皮などに付着した天然酵母で発酵。
発酵液の状態をチェックしながら、樽、またはステンレスタンクで最も適した熟成をさせて、雑菌などが入り込まぬように注意を払いながら瓶詰め。

もし、世界中のワイン産地でこのようなワインづくりができるのであれば、どんなワインであっても、各テロワールが持つティピシエ(特徴)を反映した理想的な味わいが楽しめることでしょう。

しかし、ワインの原料となるブドウは自然に大きく左右されてしまうため、現実はそう簡単ではありません。
特殊な大手生産者は別として、ほとんどの生産者がワインをそれなりのレベルで毎年出荷するためには、“それなりの対処”をしなければならないのです。

今回、そんな、“それなりの対処”のひとつである、「アルコールの除去」についてお伝えします。
この技法、賛否両論あるようですが、消費者としても知っておくべきひとつの真実でもあります。

ぜひ、参考にしてみてください。
              
                 

アルコールを除去すると考えられる理由①

13949                 
まず、「アルコールの除去」と聞いて、どういうことなのか、と感じた方は多いはずです。
そもそも、“ワイン法”があるように、法律で徹底されているこのカテゴリにおいて、アルコール度数を操作することが可能なのか、不思議に思ってしまうのは無理もありません。

実は、アメリカなど新世界と呼ばれている国で認められているほか、欧州連合の規則が2008年11月に変更になったことにより、地域のアペラシオンの法律で認められていれば、アルコール除去を行う工程が可能となっています(ボルドーの一部の生産者もしている)。

なぜ、ワイン銘醸地と呼ばれる場所のワイナリーたちが、こんなことをしているのか。

理由は、近年の温暖化の影響による、アルコール度数の上昇が鍵を握っています。
               
                 

13950                 
ブドウは生育していくにつれ、実の糖度が上がっていきます。それに伴い、酸も上昇しますが、糖が成熟した頃に一気に酸が落ちていきます。

一般的なワインの教科書には、この糖度と酸のバランスを見て収穫すると良い、ということが記載されていますが、実は鍵を握るのはフェノール類の成熟です。

ブドウは、糖と酸だけではなく、生育の過程で風味に大きく関わるフェノール類も成熟していきます。
一説によると、地域の気温などによって糖や酸の生育度が変わるのですが、フェノール類の成熟には、どの地域もさほど差がない、と言われています。

結果、気温が高い産地または温暖化が進みだした産地の場合、フェノール類の成熟を待っていると、糖度が相当高くなり(酸も極端に減少)、最終的にボリューム感が強いだけの高アルコールワインができてしまう、ということになってしまうのです。
                 
                  

アルコールを除去すると考えられる理由②

13951                 
さて、アルコール感の強い、ボリューミーで果実味たっぷりのワインができてもいいではないか、という意見もあるでしょう。事実、一昔前はこのようなワインがトレンドとなり、今も尚このテイストのワインを好む方もいます。

しかし、近年では“テロワールを反映した、繊細なワイン”が注目されており、生産者の多くもこういったワイン造りへと舵を切り始めています。

実は、アルコールはワインが持つさまざまな香気成分をマスキングしてしまうことが研究によりわかっており、ワインが持つ“繊細な香りや風味を味わう”楽しみを奪ってしまうのだそうです。

敢えて、前述した消費者向けに高アルコールワインを生産している場合は別として、繊細なワインを造りたい生産者としては、“糖度、酸、風味”のバランスが良いワインを造りたいわけです。

しかし、相手は自然。空に向かって大声で理想論を語りかけ、祈りを捧げても、どうにもなりません。

そんな時、風味が成熟するまで我慢した結果、アルコール度数が高くなっても、それをある程度減少させられる「アルコールの除去」という技法が一部歓迎されているのです。
                  
                  

逆浸透法

              
そもそも論として、ワインからアルコールを除去することなどできるのか、という話になります。
今、ワインからアルコールを除去する方法として採用されているものが、大きく分けて二つあります。

それが、「逆浸透法」「スピニングコーン・カラム」です。
           
                          

13955                   
「逆浸透法」に関しては、古くから採用されており、恐らく私たちが今まで飲んできたワインのいくつかは、この技法によって造られている可能性があります。

「逆浸透法」なのですが、まず浸透の原理を思い出しましょう。
一般的に、二つの溶液が半透膜で隔てられていた場合、低濃度の溶液はその膜を通過して高濃度の液体へと移動します。(浸透)
ワインの場合、浸透法を使ってしまうと液体が薄まってしまうため、逆に高濃度の液体側に圧力をかけるという「逆浸透法」が採用されているのです。

「逆浸透法」は、ワインをフィルター面と平行に流すことでフィルターの孔(あな)の目詰まりを防げる、「クロスフロー濾過」という方法が採用されています。

さて、「逆浸透法」でのアルコール除去の方法ですが、多くの細い管でできた円筒にワインを入れると、ワインが管を通って透過液を取り出すことができます。
この取り出された透過液は、「水・酢酸・アルコール」が主成分となっています。そして、この透過液を蒸留したり、別の膜に通すと、アルコールが除去できるというわけです。

風味だけは残ったアルコール無しの状態の透過液を、ほかのワインにくわえれば、そのワインのアルコール度数は下がり、風味も良くなります。
これで、アルコールに風味がマスキングされている、高アルコールワインの問題は解決できる、と考えられています。
                 
              

スピニングコーン・カラム

13952               
次に、アルコールを除去する方法として採用されているのが、「スピニングコーン・カラム」という方法です。
これは大変画期的な製品であり、ワイン以外にも多くの用途で活躍しています。

「スピニングコーン・カラム」は、一般的に円柱(カラム)状の装置です。この中には、円錐状の装置が数十個ほど縦に積み重なっており、回転する装置、しない装置と交互に配置されています。

円錐の中は真空状態となっており、そこにワインを入れて回転させると、液体は広がりながら壁面を伝って下に落ちていきます。
そして、円錐の底部分に蒸気を送り込むと、円錐中のワインの香気成分がどんどん上に運ばれ、凝縮した風味の軽量成分を採取することができます。

この原理でアルコールも除去できるため、残ったワイン(風味無しの)で減らしたいだけアルコールを除去します。
ある程度、アルコールを除去した液体に、先に採取しておいた風味を加えれば、バランスの良いワインが完成する、という仕組みとなっているのです。

ちなみに、「スピニングコーン・カラム」は日本でも活躍中で、ノンアルコールワイン、低アルコールワインを作成する際に活用されています。
より、「スピニングコーン・カラム」のことを知りたい方はこのページを確認してみるとよいでしょう。
                 
                   

個性か上質さか

13953              
冒頭、アルコールを除去することは賛否両論ある、とお伝えしましたが、皆さんはどう思うのでしょうか。

余計なテクノロジーを介入させず、土地の個性を最大限活かした、それぞれのヴィンテージの特徴が反映されているワインが上質であると捉える方もいるでしょう。
しかし、温暖化の影響で個性がマスキングされているのであれば、それを取り除いて上質なワインとして市場へ出すことは悪くない、という考え方もあるかもしれません。

さらに、大量生産されているワインを少しでも高い品質で飲んでもらいたい、というメーカー側の思いがあるとすれば、それも間違いではないでしょう。

この技法を採用することの善し悪しについては、正解は無いのかもしれません。
ぜひ、ワイン好きの友人、知人などと、酒のつまみの議題として取り上げてみてください。
                  
                

caveおすすめのワイン
  • 「ワインを買う」という行為を少しでも、より楽しくできればと願い・・
    caveスタッフが厳選した、毎月オススメのワインをお送りいたします。

    これまで、「赤ワイン」「白ワイン」以上のことはあまり分からなかった方々。
    なんとなく「買っては飲んで」を繰り返し、結局自分が好きなワインは何なのか、いまいちわからなかった方々。

    そんな様々な「わからない」を解決するための特典を多数ご用意しております!
    「ワインを買う」という行為を少しでも、より楽しくできればと願い・・
    caveスタッフが厳選した、毎月オススメのワインをお送りいたします。

    これまで、「赤ワイン」「白ワイン」以上のことはあまり分からなかった方々。
    なんとなく「買っては飲んで」を繰り返し、結局自分が好きなワインは何なのか、いまいちわからなかった方々。

    そんな様々な「わからない」を解決するための特典を多数ご用意しております!
CAVE THE SELECT
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします。

The following two tabs change content below.
ナカゴミ コウイチ

ナカゴミ コウイチ

山梨県出身、甲州ワイン育ちのフリーライターです。ラジオ関係、ファッション関係のライティングをしながら、大好きなワインのお仕事も精力的に行っています。ワインは日常的に楽しむ飲み物であるということを広く伝えて行くために活動を続けています。

関連記事