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豆知識

ピノ・ノワールに含まれている代表的な香気成分について

世界に数千種類あると言われる、ブドウ品種。その中でも、ピノ・ノワールの魅力に惹かれている、という方は多いはずです。

淡く美しい色合い、若い頃の赤い果実の香り、熟成して現れるスパイシーな香り、穏やかなタンニンと洗練された酸。数千年前から存在していたと言われているこのブドウ品種ですが、今もなお、世界中のワインファンを魅了し続けています。

さて、かく言う自分も大のピノ・ノワールファンのひとり。
一般的なワイン本(雑誌)に書いてあるような一般的な香りの知識ではなく、化学的にどんな香りが含まれているのか、気になったので調べてしまいました。
ここでは、ピノ・ノワールに多く含まれている、香り成分についてお伝えしていきましょう。
               

多く含まれているのは“香りにさほど影響を与えない酸”

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今回、参考にしたのは2014年に発表された、「日本食品工学会誌」に掲載されていた「機器分析から見たワインの香り」

三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 基礎研究部の大西氏らが、ブルゴーニュ産のピノ・ノワールをガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により分析を行った発表です。

大西氏らが分析を行った結果、主要成分として検出されたのは、「乳酸エチル」、「コハク酸エチル」など揮発性の低い(空気中に揮発しにくい=液中から離れにくい)成分ばかりだったようです。

もちろん、全ての成分が何かしらワインの香りの生成に関与しているのですが、香りに寄与する成分が最も多い、というわけではないということになります。

                

香りに寄与する成分は?

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では、ピノ・ノワールに多く含まれている香りに寄与する成分はどんなものが多く含まれていたのでしょうか。
大西氏らは、次にGC/O分析により、香気成分を調べました。

まずは、「フェネチルアルコール」。これはフローラル、バラ様の香りを呈します。
次いで多かったのが、カラメルの香りを呈する「ヒドロキシ-3,5-ジメチルフラン-3-オン」などのフラン類、さらに醗酵をしているような香りを呈する「イソアミルアルコール」です。

さらに、面白いのが「ウイスキーラクトン」なのですが、これは桜餅のような香りの成分でもある、ということです。

大西氏らの分析によると、検出できた香気成分は77種類。
もちろん、ワインには数百の香りがあるのですが、かろうじてわかりやすい香気成分があるとすれば、このくらいだろうという見解なのです。

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【ワイン抽出物のGC/O分析で検出された香り】

フェネチルアルコール…フローラル,バラ様

4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフラン-3-オン…綿菓子,カラメル

イソアミルアルコール…醗酵様

βダマセノン…リンゴ飴,フローラル

4-ビニルグァイアコール…スモーキー、ウッディ

              

スワリングで生まれる香り&注意すべきこと

13505ワインファンであれば、まずグラスに注がれたワインを一嗅ぎし、次にグルグルとスワリングを行うと思います。
大西氏らは、このスワリングをした時に発せられるピノ・ノワールのワインについての香気成分の検出も分析しています。

スワリングをすると、エタノールやイソアミルアルコールだけではなく、コニャックなどに含まれるオクタン酸エチル(別名カプリル酸エチル)やヘキサン酸エチルなど、香りに寄与する香気成分が検出されたようです。
酒類に含まれる成分がエステル類が立ち上るようになってくるため、ある意味ではこの行為は正しかった、と言えるでしょう。
しかし、非常にこれらエステル類が含有されている量が少ないため、あっという間に揮発して跡形も無く消え去ります。
つまり、スワリングしすぎると、エステル類は消滅する…ということになるようです。

ぐるぐると、何度もスワリングする方をたまに見かけますが、どんどん香りが取れなくなるだけなので、あまりテンションを上げ過ぎない方が良いでしょう。

             

産地によるピノ・ノワールの香りの違い

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フランス産のピノ・ノワールだけではなく、近年ではニューワールドのピノ・ノワールも高く評価されています。
ブルゴーニュ産のピノ・ノワールの価格が高騰している今、とある評論家は「新世界のピノ・ノワールは未だ適正価格だから、今のうち飲んでおいた方がいい」とさえ言っています。

さて、それでもブルゴーニュ地方のピノは別格である、という方も多く、個人的にもそうかもしれない…と密かに思っています。

さて、そんな与太話はともかく、大西氏らはさらにブルゴーニュ以外の産地のピノ・ノワールの香気成分も検出し、比較検討を行っていました。

比較されたのは、ブルゴーニュのピノ・ノワールのほか、アメリカのソノマ、チリのカサブランカバレーのものです。

結果、ブルゴーニュとソノマのものはフローラルな香りが強く、カサブランカバレーはフルーティーな香りが強かったことがわかりました。

さらに、カサブランカバレーのピノ・ノワールもフルーティーな香りを呈する、「フェネチルアルコール」が強かったものの、それをも凌駕するパンチのある香り、サイダー様の「ブタン酸エチル」などといった、フルーティーな香調成分が多数検出された、という結果になりました。

チリなどの温暖な土地のピノは、フルーティーである、という見解もあながち間違いではなかったようです。

また、ブルゴーニュではウッディな香りを呈する「4-ビニルグァイアコール」が強く、カサブランカバレーでは「メチオナール」つまり、ポップコーン様の香り成分が強飼ったのも興味深い結果です。

ソノマのピノ・ノワールは、リンゴ飴様の「β-ダマセノン」、さらにラム酒系の香りを呈する「ヘキサン酸エチル」が多く検出されたようです。
              
                

余韻について

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最後に、大西氏らはピノ・ノワールのワインを飲んだ後の余韻の機器分析を行うために、PTR-MSという機器を使用。

フルーティさに寄与する「酢酸エチル」、醗酵臭の「イソアミルアルコール」、フローラルな香りに寄与する「フェネチルアルコール」に由来するイオンをモニター対象として、呼気中の濃度変化を分析しました。

結果、もっとも短時間に現象するのはフルーティーさに寄与する「酢酸エチル」で、飲み込んでもしばらくは濃度上昇が続いたのはフローラル香を呈する「フェネチルアルコール」だ、ということがわかりました。

余韻というのは、ワイン飲用後に口腔や喉にワインの皮膜ができ、その皮膜から香気成分が放出されているのでは、というのが大西氏らの見解であり、この減水の仕方がそれぞれの香気成分によって違うため、余韻としてのワインの印象が変化していくではないか、ということです。

             

人の脳や味覚がそれを全て捉えるかは不明

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ピノ・ノワールに含まれる香気成分において、対象となったワインを分析した結果、このような成分が検出できました。
確かに、言われてみればそうかもしれませんが、ワインには検出できた以上の香りが含まれていますし、味覚受容体や嗅覚受容体の応答によっても、感じ方が変わる可能性があります。

ましてや、香りの記憶は人によっても変わるため、これまで人生で出会って来た香りから成る嗅覚中枢の働きの違いによって、香りの感じ方は変わってくるでしょう。

「美味しさの脳科学」の著者であるゴードン・M・シェファードは、風味研究の権威ですが、「ヒト脳風味系」という言葉を使い、我々が香りや風味を感じる複雑なシステムは、いまだ未知な部分が多いと語っています。

とはいえ、今回の分析のような、どのブドウ品種にどんな香りが含まれているのか、ということを検出する実験は大変興味深いことには間違いありません。

少し、難しかったかもしれませんが、覚えておいて損は無い知識です。
ぜひ、チェックしておいてください。



参考

食品新技術研究会 機器分析から見たワインの香り
              

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