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豆知識

ワインテイスティングは才能では無い?誰でもプロレベルのテイスティングを手に入れられる理由とは?

世間的に認められているワインテイスターやライター、そしてソムリエたち。
我々ワインファンの多くは、彼・彼女らの卓越した嗅覚や味覚に感嘆し、「ワインの神様に選ばれた人たち」かの如く敬い、崇拝します。

しかし、一説によるとテイスティングにおける能力は才能と言うよりは、「お勉強の量」で決まるらしく、我々のような一般人であっても”努力次第”で同等レベルの力をつけられるようです。

一体、ワインテイスティングの能力は勉強量で決まる、ということはどういうことなのか…。
関係する情報をまとめてみたので、ぜひ息抜きがてら、参考にしてみてください。

      

味覚過敏とワインテイスティング

10399まず、前提としてテイスティング能力が高い人は、味覚に優れていると思われています。しかし、それは違っている、という見方の方が有力です。

まず、味覚における「苦み」の感じ方の違いを調査する際によく用いられているものに、PROP(プロピルチオラウラシル)という溶液があります。
この溶液に紙片を浸したものを数人の被験者に舐めさせると、「何も感じない」「苦いと感じる」「不快なほど苦く感じる」といったように、苦みに対する感受性には個人差があることが示唆されています※1。

これは苦みに関するものであり、甘味受容体や塩味受容体などとは相関関係が無いと言われているようですが、ワインにとってみれば、苦みに関係する味覚特性は重要です。

     

味覚過敏は逆にワインが楽しめない?

10311カナダ・ブロック大学のゲイリー・ピカリン教授は、PROPに対する感受性の違いがワインテイスティングに関係するかを研究しており、「PROPを適度、または強く感じた人は、赤ワインの渋み・酸味・苦みを強く知覚する」ということを突き止めました。

さらに、男性に比べ、女性の方が味覚過敏であることも示唆されています。しかし、教授は「味覚過敏の人は、一般的な人たちが“美味しい”と思えるレベルのワインを楽しめない可能性がある。どれをとっても過敏になりすぎると、きっとワインのほとんどを美味しくないと感じてしまうだろう」と述べています。

味覚に敏感である、ということとワインテイスティング能力は、そこまで深い関係は無さそうです。

      

ワインテイスティングと文書分析

10312だいぶ前の研究になってしまいますが、ワインサイエンスにおいて、かなり注目された研究があります。
それが、ボルドー大学のドゥニ・デュブルデューと認知心理学者のフレデリック・ブロシェが行った、ワインテイスティングにおける研究です※2。

論文内で発表された研究で話題となったのは、白ワインを赤くしたら被験者が間違ったとか、高いワインと聞かされて飲んだら美味しく感じたとか、高級ワインとチーズ、並級ワインとチーズと組み合わせて飲んでもらったら、同じチーズでも高級ワインと合わせたチーズを高く評価したなど、人間の脳や視覚が事前に伝えられた情報によって翻弄された、ということが示唆された部分です。

実は、発表内容には「行動分析」、「文書分析」、「脳機能分析」と3つの切り口があり、個人的には、テイスティングと勉強について面白い発見がなされていた「文書分析」に着目してみました。

      

ワインのタイプでプロは表現していた

10402彼らは、5種類の資料をまとめ、それらを文書分析用ソフトウェアでさまざまなカテゴリにまとめるという作業を行いました。

集められた文書は、ロバート・パーカーやジャック・デュポン、フレデリック・ブロシェ自身のテイスティングノート、評価本「アシェットガイド」、ワイン見本市「ヴィネクスポ」に参加した44人のワイン専門家のテイスティングノートです。

それらをまとめた内容から分かったことが、「ワイン自体から得た情報ではなく、そのワインのタイプから言葉を選び出していること」、「ワインによって“型”が決まっており、目の前のワインそのものではなく、(テイスターによって語彙は異なるが)その種のワインで決まっている型の語彙の中から言葉を選び出している」などです。

カベルネ・ソーヴィニヨンはブラックチェリーといったように、この種のワインの型が存在しており、その型から連想される語彙集をどれだけストックできているのかが、ポイントになってくるようです。

      

好き嫌いで判断していた

10403さらにユニークなのが、誰もが好みの種のワインとそうでないワインに決まった語彙を持っており、単一品種ワイン、ブレンドワイン関係なく、全て好き嫌いの枠内で評価していた、ということです。

テイスティングは客観的に行いましょう、と世界中のワイン指南本に記載されているようですが、やはりテイスティングは複雑な感情を持つ人間が行っているものですので、完全に“自分を殺す”テイスティングは不可能である、ということのなのかもしれません。

     

過去の記憶で差をつける

10400ここまで来れば、プロのワインテイスターになるためには、ある一定の“型”を徹底的に脳内に叩き込むことが重要であり、年間で相当な量(年間1万本とか)をテイスティングする必要があることが分かってきます。

とにかく、惰性ではなく、真剣にワインと向き合い、それらを「知る」しかないのです。ただ、お勉強だけであれば、テイスターのほとんどが似たような言語を使い、結局AIソムリエで十分であるとも言えてしまいます。

実は、この研究結果で発見された重要なポイントに、「テイスティングは、テイスターそれぞれの文化的背景に関係していた」という部分があります。つまり、テイスターそれぞれの脳内に残る、さまざまな記憶から言葉を引っ張ってくる、ということが個性に繋がると理解しています。

こんなことを言う人はあまりいないでしょうが、とあるワインをテイスティングした時、海沿い出身の方は、「夕日が沈む砂浜を思わせる」、山の近くで育った人は、「まるで雨上がりの後、新緑の中を恋人と歩いているようだ」と表現するかもしれません。

まずは型を固め、そして後は自分の経験から言葉や感覚を絞り出すことで、自分らしさを出す。一躍ワインブームを引き起こし話題となった『神の雫』的な表現が人気が出たのには、こんな部分もあるのかもしれません。

   

誰でもプロのワインテイスターになれる!?

10406今回、ワインのテイスティングの能力は、生まれ持った神から授かった(そういった人もいるかもしれませんが)ものではなく、訓練であるという仮説を紹介しました。
実は、それを裏付ける意見のひとつとして、ジェイミー・グッドのブログで紹介されていた、「Wine tasters are made, not born」というタイトルの記事がありました。

そこでは、存在論や健康情報学の研究者であるバリー・スミス氏が、オーストラリアのABCラジオ※3で話した内容が紹介されており、「専門家が優れた知覚能力持っているわけではなく、正常な感覚を持っている人であれば誰もがプロのワインテイスターになれる」と紹介されています。

続けて「品種やヴィンテージなどを覚えるため、専門家は真剣に時間をかけて勉強しており、一般的な酒好きとは同じ時間をかけてワインを飲んでいたとしても、そこが違う」というようなニュアンスのことを述べていた、と記されています。

つまり、ワインを50年間飲み続けているプロと一般人の場合、テイスティング時における向き合い方によって、「経験と記憶」のストック量がかなり変わってくる、ということになります。
我々は、勉強というスタンスでワインと多く対峙し、経験と記憶を積み重ねることで、プロ並みのテイスティング能力を手に入れられるのかもしれません。

   

【参考】
※1 食品の嗜好とPROP味覚感受性の関係

※2 The Color of Odors

※3 ABC radio

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